フリーアナウンサーの小林麻央さんの乳がん闘病のニュースを、驚きをもって受け止めた読者は多いだろう。30代前半という若さでの罹患、しかも病状は重いというのだから。

 乳がんは、日本人女性において罹患率トップのがんだ。年間の新規患者数は増加の一途をたどっており、2015年には約9万人に達したと推測されている。乳がんの患者や経験者が、親族や知人の間に1人もいないという読者はおそらくまれだろう。

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 若い世代に多いことも大きな特徴だ。罹患のピークは40代とされており、肺がんや大腸がんなどに比べてピーク年齢が低い。小林麻央さんの場合、非常に若い年齢での罹患であることは確かだが、乳がんでは「極めてまれ」とも言えないケースだ。

 国立がん研究センターが2016年1月に発表した統計によれば、乳がんの5年相対生存率は92.9%(関連記事1)。調査対象のがんのうち、前立腺がん(5年相対生存率100%)に次いで高い数字だ。「治りやすいがん」だが、同じ統計からは別の側面も見えてくる。10年相対生存率で見ると、乳がんは80.4%と第4位に落ちる。治療後5年以上を経て再発し、死に至るようなケースが乳がんは相対的に多いのだ。

 診断や治療に伴う精神的・肉体的苦痛が大きく、治療後も非常に長期間にわたるフォローアップが必要。実にやっかいな病気だ。