2016年4月に“解禁”となった電子処方箋。処方箋の電磁的作成・交付を可能にする厚生労働省令が改正され、「電子処方せんの運用ガイドライン」も公開された(関連記事1関連記事2)。

 この運用ガイドライン策定のベースの1つとなったのが、大分県別府市の地域医療連携ネットワーク「ゆけむり医療ネット」だ。厚生労働省の実証事業(処方せんの電子化に向けた検討のための実証事業)フィールドとして、2012年度と2013年度の2度にわたって、処方箋ASPサーバーを構築した電子処方箋運用の仕組みを検証してきた。

 いよいよ電子処方箋が解禁となった今、地域医療連携ネットワーク運営主体が処方箋の電子化事業を展開する上で、あらためて注目が集まるゆけむり医療ネット。その実証事業から、電子処方箋の運用の実際を見ていこう。

63施設が接続

 人口約12万人の別府市。医療機関が118施設あり、基幹病院も大学病院1施設、急性期病院3施設がそろう、医療機関が密集する地区である。別府市医師会は、同地区の病診連携の強化を図るため2010年にゆけむり医療ネットを整備。翌年に富士通のHumanBridge EHRソリューションをベースに地域医療連携システムを稼働した。

ゆけむり医療ネットの概要(出典:別府市医師会)
ゆけむり医療ネットの概要(出典:別府市医師会)
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 現在、別府市の医療機関と、同じ東部医療圏の隣接する市町村の医療機関を合わせて63施設が同ネットに接続している。このうち、4カ所の基幹病院、医師会立の検査・健診センターが情報提供施設となっている。また、在宅医療連携機能も利用しており、医師会および急性期病院(1施設)が運営する訪問看護ステーション、居宅介護支援センターなども参加している。

 ゆけむり医療ネットの各医療機関の参加・利用料は原則無料。維持管理のための費用は、別府市医師会の会員会費から拠出するとともに基幹病院から保守料として徴収している。隣接する地区の医療機関の利用については、別府市医師会と各医師会の契約のもとに年会費を徴収し、維持管理費用に充てている。