情報共有によりADL自立のための介助を実施

 患者のADL評価で最もメジャーなのがFIM(機能的自立度評価表)だ。セルフケア(食事・整容・更衣など)や排泄コントロール、移動など13項目の運動項目とコミュニケーション、社会的認知の認知項目(5項目)を、それぞれ7段階で介助量を評価する。リハビリ部門の療法士はもちろんだが、病棟看護師も導入しているところは多い。ただし、「評価した点数を伝達・共有しても、忙しい業務の中で介助すべき内容を瞬時に把握して患者に接するのは困難です。また、介護職員はFIMを理解していないので、全スタッフの“共通言語”として日常業務で使うことは難しいのが実情です」と東田氏は指摘する。

 そこで、同病院では、特に移動、食事、更衣、排尿・排便、清拭(主に首から下を拭くこと)、整容(洗顔や歯磨き)の7項目について、○(ADL訓練)、△(監視)、×(全介助)、●(要注意)という記号で表記し、一目で介入状況が分かるようにした。これらに加え、症状や注意事項を病棟ADLケア申し送り情報として共有している。「病棟のスタッフ室に端末は十分行き渡っておらず、介護職員など全員が操作できるわけではありません。そのため、毎朝、この病棟ADLケア申し送り情報一覧をFileMakerから印刷・配布して、各人がポケットに入れて業務にあたっています」(同氏)と説明する。

病棟スタッフが携行する印刷した病棟ADLケア申し送り情報
病棟スタッフが携行する印刷した病棟ADLケア申し送り情報
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 この一覧表のデータは病棟ケア内容一覧、更衣や排泄などの各ケア手順・注意事項のメニューで作成されたレコードから集約して表示・印刷している。

 「院内隅々までは無線LAN通信状況が安定していないため、導入に至っていませんが、iOSデバイスを使える職員は多くなってきたので、今後は少なくともリーダー職にだけでも端末を配布し、病棟ADLケア申し送り情報を手元で参照しながら業務できるようにしていきたいと考えています」(同氏)。