グランクレール世田谷中町外観(写真:東急不動産)
グランクレール世田谷中町外観(写真:東急不動産)
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 認知症患者が住みやすい環境を建物の設計やデザインによって実現する――。東急不動産が手掛けた「グランクレール世田谷中町」内のケアレジデンスはそんなコンセプトで作られた。同施設は、英国スターリング大学認知症サービス開発センター(Dementia Services Development Centre, DSDC)と設計段階から業務提携を行い、認知症患者にやさしいデザインを取り入れた。

DSDC 主任建築士のLesley Palmer氏
DSDC 主任建築士のLesley Palmer氏
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 グランクレール世田谷中町は、分譲マンションとシニア住宅の複合開発を行う「世田谷中町プロジェクト」の一環として開発されたシニア向け住宅。東急不動産はグランクレール世田谷中町が完成したことを受け、2017年4月25日にプレスセミナーと内覧会を開催した。プレスセミナーには、DSDC 主任建築士のLesley Palmer氏が登壇。認知症患者に配慮した設計やデザインについて講演した。

 Palmer氏は、デザインをする際には「まず使う人のことを考えることが大事だ」と話す。そこで、まずは認知症患者がどのような障害やストレスを抱えているのかを紐解いた。

 認知症患者は、記憶障害や学習障害、思考障害を抱えている。これらの障害が大きなストレスとなり、不穏行動として現れる場合もあるという。このほか、「知覚やコミュニケーションの問題も生じる」とPalmer氏は言う。さらに、老化によって起こる感覚的障害で、多くの場合歩行が困難になる。

 視覚の老化についても考えなくてはいけない。周辺視野が減少し、徐々に青や紫などの色が見え辛くなってくる。「目はかすみ、色のコントラストに対する感受性も下がり、色の区別にも影響を与える」(Palmer氏)。奥行きの知覚も減少するという。

 認知症患者にとっては、空間の中での自分の位置を調節することも難しい。例えば、廊下の端まで歩いても、ターンすることができずに止まってしまうこともよくあるという。椅子の上で自分の位置を変えることも難しいため、「椅子から立ち上がろうとして転倒してしまうことやトイレで失禁してしまうこともしばしばある」とPalmer氏は述べる。