人工知能(AI)を活用して介護計画書(個別介護計画書)の作成を支援する――。そんな研究開発をロジックと金沢工業大学が共同で開始した。2018年4月16日に金沢工業大学で開催した共同会見で明らかにした。

ロジック代表取締役CEOの和田森氏
ロジック代表取締役CEOの和田森氏
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の取り組みにより、介護職員の計画書作成負担を軽減するとともに、利用者により最適なサービスを提供することを目指す。2018年度中に計画書作成を支援する初期段階のサービスを開発・提供するという。

 ロジックは、ICタグとNFC対応のスマートフォンやタブレット使用した介護記録システム「Care-wing 介護の翼シリーズ」を、これまでに全国820事業所、約2万2500人の介護職員に提供してきた(関連記事)。年間約1000万件以上の匿名化された介護記録データが蓄積されるという。このデータを金沢工業大学が開発するAIエンジンで分析し、介護計画書作成に生かす。

 介護保険による介護サービスを受ける場合、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成した介護サービス計画書(ケアプラン)に基づき、介護サービス事業者の主にサービス提供責任者が個別介護計画を作成する。利用者一人の計画書作成に要する時間は、作成者にもよるが3~7時間かかるという。さらに、3カ月に1回程度は更新されるため、介護計画書作成が大きな負担となっているとされる。

 ロジック 代表取締役CEO 和田森久志氏は、こう語る。「介護計画書の作成・更新の負担は大きく、また作成者によって計画内容のばらつきもある。Care-wingによって得られた介護記録ビッグデータをAIで分析することで、計画書作成の負担軽減と利用者への効果的なサービス提供ができるのではないかと考えた」。

金沢工業大学の中野氏
金沢工業大学の中野氏
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、AIエンジンを開発する金沢工業大学 工学部情報工学科 教授の中野淳氏は、共同研究に至った経緯を次のように述べた。「介護記録データという生データを利用できることは、研究者として非常に魅力的。介護の現場を少しでも改善できることに大きな意義があり、ロジックとギブ・アンド・テイクの関係を築けると考えた」。