FileMakerを用いてユーザーメードで実現

 「薬剤部ではこうした鑑別作業に加え、『赤色の100番の錠剤は何か』といった看護師からの問い合わせへの対応にも時間をとられていました」(木村氏)という。個々の課題が特殊で多岐にわたることから、ユーザーメードのシステム開発に舵を切ることになった。

 開発に着手した頃、木村氏は徳島大学大学院医科学教育部(医療情報学分野)で研究を始めており、そこでFileMakerに出合った。「現場の課題やニーズに応じてアプリケーションを試作し、現場で評価して修正を加えるというサイクルを素早く回せるFileMakerの特長に大きなメリットを感じました。また、大学院でJ-SUMMITS(日本ユーザーメード医療IT研究会)の存在を知ったことも大きな後押しになりました」と、FileMakerを開発プラットフォームとすることを選んだ動機を木村氏はこう振り返る。

 FileMaker採用に至ったもう1つの大きな理由は、FileMaker GoによってiPhone、iPadなどのモバイルデバイス上でアプリケーションを活用できることだったという。薬剤識別・検索などの作業を実際に行うのは、薬局、病棟、外来などの医療現場であり、薬剤師以外にも様々な医療従事者が利用する可能性がある。木村氏は、「携帯性に優れ、容易かつ迅速に作業できるスマートデバイスの利点は大きく、FileMaker Pro+FileMaker Go+iPhone/iPadという組み合わせが最適と考えました」と強調する。

 FileMakerで開発されたカスタムApp:「薬速」は、運用・評価・改修によって新たな機能が追加され、より快適で効率性に優れたアプリケーションに進化してきた。また、iOSのネイティブアプリにも移植され、2014年6月には、お薬検索アプリ「薬速」という名前でApp Storeからの提供が始まった。

 現在、ゆうあいホスピタル薬剤部では、薬剤識別・検索業務用としてiPad Pro上で薬速を利用している。12.9インチの大型ディスプレイと高いCPUパフォーマンスによって業務効率がさらに向上したという。

薬剤部の薬剤識別・検索業務でメインに使用されているのは、iPad Proによる薬速
薬剤部の薬剤識別・検索業務でメインに使用されているのは、iPad Proによる薬速
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