がん細胞1個の中で行われる粒子線治療――。そんな例えをされる新しいタイプの放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)」が、難治性がんの治療の選択肢となる日が近づいてきた。BNCTの治療システムを、従来の主流だった研究機関ではなく、民間医療機関に導入する動きが相次いでいる。2020年ごろにはX線治療、粒子線治療に続く“第3の放射線治療”として、日常臨床での治療が始まりそうだ。

南東北BNCT研究センターの治療室
南東北BNCT研究センターの治療室
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 BNCTの第II相臨床試験が2016年2月、脳神経疾患研究所 附属 南東北BNCT研究センターで始まった(関連記事1)。BNCTの治験が民間医療機関で実施されるのは世界初。悪性度が高く、治療が最も難しいがんの1つである膠芽腫(こうがしゅ)の再発例が対象だ。頭頸部がんに対する第II相臨床試験の実施も検討中である。

 BNCTは再発がんや周囲に浸潤した進行がんなど、従来は十分な治療が難しかったがんへの効果が期待されている。膠芽腫の再発例では、1年生存率は一般には30%程度だが、BNCTではこれを60%程度に高められる可能性があるという。