国立がん研究センター、LSIメディエンス、医薬基盤・健康・栄養研究所は、「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業」を2018年3月1日に開始する。患者腫瘍組織移植モデル(PDX; patient-derived xenograft)を非臨床試験に用いることにより、新規抗がん剤の研究・開発を効率化するとともに、日本人の特性に合った新薬や希少がん・難治がんの新薬開発を支援していく。

 日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE) イノベーション創出環境整備タイプ」に採択された事業である。2020年5月31日まで事業整備を行う予定だ。

 がん患者のがん組織を免疫不全マウスに移植し腫瘍を再現するPDXは、抗がん剤開発にパラダイムシフトを起こしているとされる。今回の整備事業は、日本人がん患者由来のPDX(J-PDX)ライブラリーのプラットフォームを構築しようというもの。世界最高水準のJ-PDX研究拠点の整備と同分野の専門人材の育成を進めていくという。

 協働する3者のうち、国立がん研究センターは、臨床研究中核病院2施設とがん専門研究所を擁する。LSIメディエンスは、医薬品の非臨床試験の安全性に関する信頼性を確保するGLP(Good laboratory practice)適合施設を擁する。そして、医薬基盤・健康・栄養研究所は、重度複合免疫不全マウスを用いて多種多様なPDXを樹立した実績を持つ。

共同記者会見に登壇したJ-PDX事業のメンバー
共同記者会見に登壇したJ-PDX事業のメンバー
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 2018年2月21日に開催された共同記者会見で挨拶に立った国立がん研究センター 理事長の中釜斉氏は、「創薬開発を進めている我々センターにとっても非常に大きな夢。PDXライブラリーによって、新薬開発が大幅に加速されることを期待している」と抱負を語った。

 整備事業の代表機関であるLSIメディエンス 代表取締役社長の伊藤昭夫氏は「6年ほど前に医薬基盤・健康・栄養研究所の指導の下、PDX開発に着手したが、当時は既に米国のアカデミアやCRO(医薬品開発受託機関)が盛んに研究を進めていた。少し遅れをとったが、質・量ともに欧米に負けないPDXライブラリーをつくり、日本の創薬に貢献したい」と意気込みを語った。