ビジネスの土壌をつくる

 MSDの親会社、Merck & Co.が本社を置く米国では、ヘルスケアベンチャーの「イグジット(exit)やそこに至るロードマップが明確だ」と樋渡氏は話す。べンチャーキャピタルによるヘルスケアベンチャーへの投資額は、米国では年間4000億円を超えるとされる。多くの製薬企業や医療機器メーカーが独自のコーポレートベンチャーを持ち、ベンチャーへの出資や長期的視点に立った育成に力を入れている。

 実際、Merck & Co.は2010年、ベンチャーへの投資を目的としたコーポレートベンチャーキャピタル「Global Health Innovation」を設立。総額5億米ドルの資金を持ち、既に20社以上に対して計3億米ドルの投資を行ったという。

 こうしたベンチャー支援の基盤が「日本には存在しない。今回はその土壌づくりに取り組みたい」(樋渡氏)。事業開発やサービス創出を念頭に置きながらも、まずはベンチャーとその顧客、事業パートナーとなりえる企業が一堂に介する“コミュニティー”を作ることを狙う。将来は、ここで育ったベンチャーとの提携なども視野に入れる。