多くの限界集落が孤立して点在している鹿児島県肝属郡肝付町。その課題を解決すべく、ICTの活用による地域包括ケアに活路を見いだした同町では今、企業や研究機関との共創による地域活性化を推進している。

 小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げで知られる内之浦宇宙空間観測所がある町。それが鹿児島県肝属郡肝付町だ。2005年7月に高山町と内之浦町が合併して誕生したこの町は、面積308km2ととても広い。車での移動だと南北に120分、東西に90分ほどかかる。

 そこに、わずか1万6582人(2014年8月31日時点)の住民が、132の集落に点在して暮らしている。132の集落のうち33の集落が、いわゆる限界集落。高齢化率90%を超える集落と高齢化率100%の集落も1つずつ存在する。

高齢化率90%の集落である辺塚の海岸(写真:日経デジタルヘルスが撮影)
高齢化率90%の集落である辺塚の海岸(写真:日経デジタルヘルスが撮影)
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 医療機関や商店は旧町の市街地に集中。多くの集落が地理的にも孤立している上、災害リスクを抱えている集落も少なくない。このため、「もともと自助や互助の意識強い地域が多いが、高齢化によって数少ない壮年世代の負担が大きくなっている」と、肝付町役場 企画調整課 参事兼福祉課保健師の能勢佳子氏は語る。

肝付町役場(写真:日経デジタルヘルスが撮影)
肝付町役場(写真:日経デジタルヘルスが撮影)
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 数多くの地域課題を抱える肝付町。実は最近では、“ロボットの町”として業界関係者の間ではちょっと知られた存在となっている。その背景には、地域包括ケアにICTを積極的に活用しようとしてきた同町の取り組みがある。