着るだけで心電・心拍を測れる機能繊維素材「hitoe(ヒトエ)」。果たしてリハビリテーションの定量化に活用できるのか――。そんな実証が始まる。

 実証を進めるのは、hitoeを開発した東レとNTT、NTTドコモ。そこに藤田保健衛生大学が加わる。同大学のリハビリテーション部門を舞台に、hitoeを使ってリハビリ患者の心拍数や加速度を連続的に取得し、リハビリの定量化に有用かどうかを探る。

歩行リハビリのデモンストレーションの様子。療法士は患者の心拍・活動データを参照して指示をすることができる。
歩行リハビリのデモンストレーションの様子。療法士は患者の心拍・活動データを参照して指示をすることができる。
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 hitoeは、繊維を導電性高分子でコーティングするNTTの技術と東レのナノファイバー素材の組み合わせで実現した素材。一般衣料向けのPET(ポリエチレンテレフタラート)の1/20の径のPETナノファイバーを使用しているため、皮膚との接触面積が広く、生体情報を高感度に取得することができる。金属製の繊維を含まないため肌に優しく、親水性が高く汗や湿気に強いという特徴がある。

 当初はスポーツ分野などに向けた非医療機器として販売してきたが、2016年9月には医療機器としての登録を完了したと発表(関連記事)。その応用範囲の拡大を図っている。今回は新たにリハビリ分野への展開の可能性を探ろうというわけだ。

藤田保健衛生大学 統括副学長の才藤栄一氏
藤田保健衛生大学 統括副学長の才藤栄一氏
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 今回、実証を進める藤田保健衛生大学 統括副学長の才藤栄一氏は、「hitoeの活用で一番期待することは患者にとってリスクが低く、効果が高いリハビリの実現」と話す。無理に運動させすぎてしまえば、効果は期待できるがケガなどのリスクが高まる。これまではリハビリの効果について定性的・経験的に諸説唱えられてきたが、hitoeを使って実際に患者の生体情報を測定することで定量的な評価の実現を目指す。