血管に極薄センサーを巻き付け、血流の速さを測る――。そんな生体センシングにつながる技術を、東京大学が開発した。折り曲げてもひずみの影響を受けることなく、圧力を正確に測れるフレキシブルセンサーだ。柔らかい曲面に貼り付けて圧力を測れる利点を生かし、まずは触診時に加わる圧力を定量化する「デジタル触診」などへの応用を目指す。

向かって左がフレキシブル圧力センサー、右が有機トランジスタのアクティブマトリクス。圧力センサーは裏面に金属電極を取りつけているため不透明に見えるが、センサー部のみの光透過率は90%と高い
向かって左がフレキシブル圧力センサー、右が有機トランジスタのアクティブマトリクス。圧力センサーは裏面に金属電極を取りつけているため不透明に見えるが、センサー部のみの光透過率は90%と高い
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 東京大学大学院 工学系研究科 教授の染谷隆夫氏と同 博士研究員のリー・ソンウォン氏らの成果。英科学誌「Nature Nanotechnology」オンライン速報版に2016年1月25日(英国時間)に掲載された。

 研究グループは今回、80μmという非常に小さい曲率半径で曲げてもひずみの影響を受けず、業界最高をうたう感度で圧力を測れるフレキシブルセンサーを開発。膨らませた風船のような柔らかい曲面上でも、圧力分布を正確に測れることを実証した。

 これを可能にしたのは、厚さが3.4μmと非常に薄い圧力センサーを実現したこと。折り曲げた時にセンサーの厚さに比例して発生するひずみの影響を、ほとんど受けずに済む。加わる圧力が0~70Paで変化すると抵抗値が2桁、0~600Paでは6桁以上変化し、この抵抗変化を電気的に読み出す方式だ。応答時間は20ms(圧力を加えた時)/5ms(圧力をなくした時)と短く、3000回以上の使用にも耐える。