医局内カンファレンスの準備時間をほぼゼロにできる、病棟管理を担当する医師にとっては夢のようなシステムが誕生した。京都大学医学部附属病院が2016年5月に導入した「メディカル カンファレンス ポータル」がそれだ。症例のリストアップや診断画像の取り寄せといった事前準備が不要になるというこのシステムの実力に迫った(京大病院のICT改革(上):バイタル記録は「かざす」だけ)。

「メディカル カンファレンス ポータルは診療科を横串にする第一歩と成り得るかもしれない」と話す京大病院の小倉雅仁氏。
「メディカル カンファレンス ポータルは診療科を横串にする第一歩と成り得るかもしれない」と話す京大病院の小倉雅仁氏。

 「これまでは、カンファレンスの前日にカンファレンス対象となる患者をリストアップし、ホワイトボードに書き出していた。ところが、このシステムを導入してから、患者リストの作成に割く時間が全く必要なくなった」。京都大学大学院医学研究科先端糖尿学講座特定助教で京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科の小倉雅仁氏は、メディカル カンファレンス ポータルの威力をこう紹介する。

 糖尿病・内分泌・栄養内科のカンファレンスは毎週水曜日に開催される。カンファレンスで検討対象になるのは、前週の水曜日からカンファレンス前日の火曜日までに入院してきた患者と、前週の月曜日からカンファレンス開催週の日曜日までに退院した患者だ。

 これまでは、カンファレンスで取り上げる症例をピックアップするために、冒頭のようにどの患者が入院・退院したのかを医師が目で確かめ、その都度ホワイトボードに名前を記入していた。この患者抽出作業は手間がかかる上に、「対象患者が漏れてしまうこともあった」と小倉氏は話す。

 患者リスト作成後は、研修医が対象患者の電子カルテや診断画像などのデータを見て病状を把握し、各患者の病状や検査データをメモ書きしてプレゼンテーションの構想を練り、カンファレンスでは前に立って発表する。

対象患者のリスト作成を自動で

 このカンファレンスの流れは、メディカル カンファレンス ポータルの導入で一変した。カンファレンス対象患者の抽出は、条件さえ設定しておけば自動で行われる。糖尿病・内分泌・栄養内科のカンファレンスでは、「水曜日から火曜日までに入院してきた患者」と「月曜日から日曜日までに退院した患者」という条件を設定。すると、電子カルテの情報から該当患者が抽出され、カンファレンス前日の16時半までに対象患者のリストが自動で作成される(図1)。

図1 抽出した患者リスト(写真提供:キヤノンITSメディカル)
図1 抽出した患者リスト(写真提供:キヤノンITSメディカル)
設定条件を入力すると、カンファレンス対象患者のリストが自動で作成される。