岡山県美作市(みまさかし)には、国内最大となる出力240MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の計画が進むなど、将来的に市内に300MWを超える太陽光発電所が集積する見込みだ。同市の萩原誠司市長は、通商産業省(現・経済産業省)出身で衆議院議員も務めるなど産業・エネルギー政策にも詳しい。メガソーラーと地方行政の在り方について聞いた。

300MW越える太陽光が市内に立地

美作市の萩原誠司市長
美作市の萩原誠司市長
(出所:日経BP)

――美作市には、パシフィコ・エナジー(東京都港区)が「美作武蔵メガソーラー発電所」(出力約42MW・太陽光パネルベース)を稼働し、さらに出力240MW(パネルベース)の国内最大級のメガソーラーを計画するなど、国内有数の太陽光集積地になります。

萩原 町内にはパシフィコ・エナジーの2サイトに加え、ほかの事業者によるメガソーラーや非住宅用太陽光、そして住宅用も多く、すべて合わせると、将来的に300MWを超える規模になると見ています。1つの市町村に設置される太陽光発電の容量としては全国でも最大規模ではないでしょうか。

 美作市は、「晴れの国」といわれる岡山県の中では相対的に低温です。結晶シリコン系太陽電池は高温になると発電効率が下がってきます。日照量が多い上に気温が低いという、太陽光発電にとって絶好な条件のため、開発計画が相次いでいるのです。

――自治体として、メガソーラーの急増をどのように捉えていますか。

萩原 民有地に建設されるメガソーラーは、地権者の判断で土地の有効活用の一環で計画するものであり、自治体としては、中立の立場で臨んでいます。というのは、地方自治体にとってはメリットとデメリットの両面があるからです。

 利点には大きく2つあります。固定資産税による税収の増加と雇用の創出です。建設期間中、多くの場合、土木工事などが地元事業者に発注されるため、一時的ですが地域経済の活発化につながります。このほか、全国有数もの規模になれば知名度も上がるので、環境問題に熱心に取り組んでいる自治体、というPR効果にもなります。

 デメリットとしては、土地の保水力が低下することによる安全面の問題。そして、20年間、土地を発電事業に占有することで、他の事業の誘致を閉ざしてしまうことです。実は、市長に就任してから、市内への工場誘致に成功した事例も出てきました。工場の国内回帰の兆候もあり、こうした動きにも期待しています。

 メガソーラーでパネルを敷き詰めてしまうと、より雇用創出力のある、ほかの事業の進出を締め出してしまうことになります。これは見えないデメリットに感じています。