緑地雑草科学研究所(福井県鯖江市)で理事を務める伊藤幹二氏(マイクロフォレスト リサーチ代表)と伊藤操子氏(京都大学名誉教授)に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)における雑草対策のあり方などについて聞いた。過去2回のインタビュー記事では、雑草リスクとその対策の方向性を聞いた(関連記事1)(関連記事2)。3回目となる今回は、実際にメガソーラーの防除プランを立てる場合の筋道などについて聞いた。

緑地雑草科学研究所・理事の伊藤操子氏と伊藤幹二氏
緑地雑草科学研究所・理事の伊藤操子氏と伊藤幹二氏
(出所:日経BP)
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――これまでのインタビューで、メガソーラーに合った雑草管理のプラン(最良管理慣行)を構築する必要性を強調していました。こうしたプランを確立できた場合、雑草管理は、どんな頻度で、どの程度のコストになりそうでしょうか。

伊藤(幹) 具体的に管理プランが決まってみないと正確なことは言えませんが、イメージ的には、土壌の前処理(雑草地下茎のクリーンナップなど)を行った場合、年に1~2回、土壌の前処理を行わなかった場合、年に5回とか3回、理想的には、初年度に3回、次年度に2回、3年度目に1回というのが目標になります。

 コストについても具体的な対策次第ですが、1m2当たり高くて1回100円以上、一般的には50円台、10円台というようなレベルです。今後、メガソーラー事業の雑草防除の体系を確立していく中で、管理コストの相場も決めていく必要があります。

 例えば、すでに雑草の管理体系が確立している水稲の場合、1m2当たり1回3円、ゴルフ場で同10円、鉄道敷で同30円程度が相場になっています。もちろんこれはある程度の広さが前提になります。水稲なら1ha、ゴルフ場なら30haが1サイトの平均です。

 逆に言えば、既存の施設で、雑草防除にかけるコストはこの程度とも言えます。

―― 一概にメガソーラーの雑草対策といっても、住宅地に近いか、山奥で人家から離れているか、などで想定する雑草の生え方のイメージはかなり違います。

伊藤(幹) 実際に雑草管理プランを作っていく過程では、まさにその点が重要になります。つまり、目標とする「雑草の状態」をどのように設定するかです。

 防除対策の目指す雑草の状態には大きく、以下の4タイプがあります。(1)雑草を発生させない。(2)雑草を低草高に維持する。または、低い背だけの雑草植生にする。(3)雑草量を削減して、管理作業を軽減する。(4)芝生など被覆植物で維持管理するーー。

伊藤(操) 加えて、空間的にどの程度を想定しているのか、全面なのか一部でいいのか、例えば、フェンスなど周辺をどうするのか。そして、時間的な目標、つまり、1回の対策でどの程度の期間、目標とする状態に維持しておくのか、という点もあります。