系統コストを抑える小規模分散型

――日本ではFIT開始以降、野立ての太陽光発電所が急速に増えています。そんななかSPN社は一貫して屋根上への設置に取り組んでいます(図1)。

図1●静岡県富士市の西部浄化センターに設置した出力約1.21MWの屋上型メガソーラー(出所:ソーラーパワーネットワーク)
図1●静岡県富士市の西部浄化センターに設置した出力約1.21MWの屋上型メガソーラー(出所:ソーラーパワーネットワーク)
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グッドマン氏 野立てのメガソーラー事業は今後もなくなりませんが、先進国で再エネ事業を成功させるための条件を、必ずしも満たしていない場合もあります。その条件とは、クリーンであること、経済的であること、そして、供給の安定性です。

 旧来の電源と、本当の意味で共存するためには、例えば、経済面では、グリッドパリティを達成することが求められるでしょう。

 メガソーラーと、小規模な分散型の太陽光発電所を、これらの3つの条件で比べると、メガソーラーは供給の安定性で劣っています。小規模な分散型の太陽光発電所は、街の中にあるのに対して、メガソーラーは遠隔地に立地しています。メガソーラーで発電した電力の送電で、コストを要します。送電網の増強などが必要になることもあります。

 小規模な分散型の太陽光発電所ならば、例えば、街にある工場の屋根上にあり、送電網のコストは最小で済みます。先進国では、既存の送電網を使うために、従来の発電所から、太陽光発電所に置き換えると、どうしても送電網に要するコストが増えがちです。いまの送配電網は、既存の電源による配電を前提に最適化したものだからです。

 送電網に要するコストは、発電所の約2倍となります。日本の大手電力会社の財務情報を分析しても、送電網に発電所の約2倍のコストがかかっていることがわかります。

 2014年9月に起きた、いわゆる「九電ショック」(再エネの接続申し込みの回答保留)は、送電網の空き容量が一杯になってしまった後の送電網の整備を、電力会社だけでは負担しきれないという問題提起だったとも言えます。

 従来の電力システムの中で、最もコストがかかるのが送電網であり、遠隔地から送電するメガソーラーは、送電網に追加的なコストを強いるという点で、小規模な分散型太陽光に劣ります。

 安定性についても同じです。天災による影響として、一般的には発電所の損壊よりも、送電網の損壊の影響の方が大きいものです。この面で、エネルギーを地産地消する小規模な分散型太陽光の方が、長距離を送電するメガソーラーよりも安定性に優れるといえます。