「買取価格27円でも事業性は満たせる」

――FITにおける10kW以上の太陽光発電の買取価格は、2015年度下期に27円/kWhに下がりました。日本企業の中には、事業性が低いとして、新たな案件の開発を断念する企業も出ています。この価格設定をどのように見ていますか。

グッドマン氏 27円/kWhの買取価格は、太陽光発電の事業性を満たせる価格だと考えています。電力利用者の賦課金を下げる意味で正しい判断と思います。買取価格を27円/kWhに下げることによって、太陽光発電の関連分野はコスト削減を強いられますが、結果的に事業の効率が上がったり、再エネ分野全体の経済合理性が高まることが期待できます。

 カナダのオンタリオ州でも、同じようなペースで買取価格を下げてきました。32セント/kWhでスタートし、29セント/kWh、27セント/kWhと下がってきました。日本でもカナダでも、買取価格を下げ、電力利用者への負担を減らすことは重要です。

 海外企業の中にも、この価格設定では事業性を満たしにくいと判断し、日本市場から出ていく企業があるかもしれません。SPNは、日本にとどまるつもりです。技術革新の速い産業分野の常として、時間とともに経験を積んで効率が高まり、価格が下がっていきます。太陽光発電も同じ状況にあります。

――コスト削減の余地は、どの辺にありますか。

グッドマン氏 4つのポイントがあります。一つ目は、太陽光パネルとパワーコンディショナー(PCS)などの主要設備です。

 オンタリオ州でも、FITの買取価格が低下するに従い、関連設備や資材のコストが下がっていきました。国際競争の中で、メーカーが破綻する例もある一方、新興企業が次々に登場し、パネルやPCSの効率は向上を続けています。

 2つ目は、設計・施工です。北米でも欧州でも日本でも、2~3年前に比べて、太陽光発電設備をより効率的に設計し、設置できるようになっています。コスト削減と高効率化の圧力が強まることで、設計と施工の革新が進んでいるのです。

 3つ目は、ファイナンスです。日本では、FIT開始後、2~3年は、太陽光発電に対する理解があまり進まず、金融機関はリスクを判断できませんでした。実際には、政府による20年間の買取保証があり、リスクは十分に管理できますが、理解が得られず、返済の利率にも反映してもらえませんでした。しかし、現在では、金融機関の理解が進み、前向きになっています。

 4つ目は、太陽光発電事業者が得る利幅です。われわれも努力しなくてはなりません。

 買取価格が27円/kWhに下がったから、撤退しようなどという判断は、近視眼的な経営判断と感じます。というのは、太陽光発電には、今後も明らかに巨大な需要があるからです。これまで想像できなかったようなレベルの需要が出てきています。

 G7でも確認されていますが、今後、石油の時代から、再エネと原子力発電の時代に急速に移行していきます。その中で、より効率的に発電事業を実現するような、クリエイティブ(創造的)な手法が、いまほど求められている時代はありません。