積雪後の発電量の回復、品種間で違い

――九州北部は、この2年間、大雪に見舞われています。九州の太陽光発電システムは、北海道や東北、北陸などと違い、積雪への備えは十分でないと思います。どのような影響がみられましたか。

 2017年2月11日の降雪時には、屋外曝露試験サイトの様子を撮影しました。この日の積雪は約5cmで、それまでの「大雪」には達していませんでした。

 午前8時の時点で、ほぼすべてのパネルが雪で全面を覆われていましたが、午前9時近くになると、一部のパネルでは、雪が溶けたり下に滑り落ちたりし始めました。

 九州センターの屋外曝露試験サイトの太陽光パネルは、コンクリートによる架台一体型の基礎(関連コラム)に支えられていて、設置角は26度と、九州の多くの太陽光発電所に比べると、高い設置角となっています。

 早くから雪が溶け始めたパネルの発電量を調べてみると(図4)、アモルファス(非晶質)シリコン型と、結晶シリコンを使ったヘテロ接合型のいずれも、雪によって光が遮られることで、発電量が減っていることがわかります。

図4●2017年2月の積雪時の様子
図4●2017年2月の積雪時の様子
(出所:産総研 太陽光発電研究センター)
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 パネルの表面から、雪が溶けたり滑り落ちたりして、それまで上を覆っていた雪が減ってくると、発電量が回復していく様子もはっきり表れています。

 こうした例は、発電量のデータだけでも確認できますが、太陽光パネルへの積雪状況と対比させながら把握していくことが重要です。実際の環境で起きている現象と、データを結びつけることに取り組んでいます。

 太陽光パネルへの降雪が減り、発電量が回復していく様子は、パネルの種類によって違いがありました。

 アモルファスシリコンと結晶シリコンを使ったヘテロ接合型では、発電量の回復具合に違いもありました(図5)。I-V(電流-電圧)特性を見ると、結晶シリコンを使ったヘテロ接合型は、回復の途上では、セルを直列に接続した列ごとの積雪状況が反映され、雪がかかっている部分は発電しないといった状態になるので、階段状の特性を示しました。

 草木の影がパネルの一部を覆った時も、こうした階段状のI-V特性を示すことがあります。

図5●パネルによる発電量の回復具合の違い
図5●パネルによる発電量の回復具合の違い
アモルファスSi型(左)、結晶シリコンを使ったヘテロ接合型(右)(出所:産総研 太陽光発電研究センター)
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 このほかに興味深いのは、パネルによって積もった雪が早くから溶けていくものから、すぐには溶け始めないものまで、差のあることです。

 カバーガラス表面の接触角や、摩擦の状態によって差ができるようです。