太陽光パネルは、開発時や製造時の抜き取り品を対象に、複数の加速試験などを重ね、性能や信頼性、安全性に関して評価している。しかし、それらは特定の環境要因ごとに過酷な条件に曝露させる試験装置が使われる。一方で、実際の発電所は、複数の環境要因が同時に変化する中に、さらされながら運用する。こうした実際の環境下で長期間、稼働した太陽光パネルが、どのような影響を受けるのか。産業技術総合研究所(産総研)九州センター(佐賀県鳥栖市)における研究や検証の例を、産総研 太陽光発電研究センター モジュール信頼性チーム 千葉恭男研究チーム長に聞いた(第1回の掲載記事)。
――九州センターの立地する佐賀県鳥栖市などの九州北部は、日照に恵まれて太陽光発電に向く一方、春には大陸から多くの黄砂が飛来します。太陽光発電は、黄砂によってどの程度、影響を受けますか。
一般的に、太陽光パネルが一定以上の角度で傾けて設置されていれば、太陽光パネルの表面に、砂や粉塵が降り注いた場合でも、その後、雨が降ると洗い流されます。
それは、黄砂でも同じです。2017年5月8日の例で見てみましょう(図1~2)。この日は、黄砂が多く降り注ぐことが予想されていました。
この日の正午ごろ、九州センターの屋外曝露試験サイトに設置されている太陽光パネルを調べると、やはり黄砂と思われる汚れが、多く付着していました(図2上)。
この2日後の5月10日に、雨が降りました。降雨後に、再び屋外曝露試験サイトに設置されているパネルを調べると、2日前にあった黄砂の付着は、ほとんど流れ落ちていました(図2下)。
パネルを覆って発電量を減少させる現象としては、黄砂よりも影響の大きな要因があります(図3)。
例えば、サクラの花びら、草木の葉、鳥のフンが太陽光パネルに付着したり、パネルの前で高く伸びた雑草が影を落としたりする現象は頻繁に見られます。
また、発電量への影響は不明ですが、太陽光パネルの裏側に、ハチが巣を作っていたのを見つけたこともあります。