太陽光パネルは、開発時や工場出荷時に、複数の加速試験などを行い、性能や信頼性、安全性に関して評価している。しかし、それらは特定の環境要因ごとに過酷な条件に曝露させる試験装置が使われる。一方で、実際の発電所は、複数の環境要因が同時に変化する中に、長期間さらされながら運用する。こうした実際の環境下で長期間、稼働した太陽光パネルが、どのような影響を受けるのか。産業技術総合研究所(産総研)九州センター(佐賀県鳥栖市)における研究や検証の例を、産総研 太陽光発電研究センター モジュール信頼性チーム 千葉恭男研究チーム長に聞いた。

――実発電環境を備えた太陽光パネルの研究や評価に関する取り組みの経緯や概要について、教えてください。

 産総研の九州センターでは、2010年9月に、敷地内の地上に、太陽光発電システムを導入しました。市販されている複数の太陽光パネルを設置し、実際の発電環境における評価を続けています。この施設を、「屋外曝露試験サイト」と呼んでいます(図1)。

図1●22種類の太陽光パネルを設置し、所内の系統に連系
図1●22種類の太陽光パネルを設置し、所内の系統に連系
九州センターの屋外曝露試験サイト(出所:産総研 太陽光発電研究センター)
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 特徴の一つは、市販されている各社の主要な太陽光パネルを、一カ所のサイトに並べた状況で評価していることです。

 通常、目にする太陽光パネルの評価は、それぞれのメーカーが、自社製品の良い点をアピールするために実施したものと言えます。

 それはそれで重要な評価ですが、それだけではなく、実際の発電環境でどのように振舞っていくのか、どのように劣化していくかが、重要だと捉え、検証しています。研究には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や日本電機工業会などの委託も活用しています。

 この曝露試験に取り組んでいる産総研 太陽光発電研究センター モジュール信頼性チームでは、ほかに二つのテーマを重視しています。「新たな部材を使った太陽光パネルの信頼性の向上、長寿命化」、「本当に正しく寿命を評価できるような試験方法の開発」です。

 曝露試験サイトには、複数の太陽光パネルをアレイ(太陽光パネルを架台に設置する単位)単位で並べ、九州センター内の系統に連系した状態で、発電しています。発電電力は、九州センター内で自家消費しています。

――不具合の可能性のある太陽光パネルなどの評価は、どこで行いますか。

 研究センターの敷地内にありますので、太陽光パネルの評価装置などは、目の前の建屋内にあります。設置している約500枚のパネルは、必要に応じて取り外して、すぐに評価装置で劣化の度合いを把握できます。

 こうした環境のため、単に劣化率の算出だけではなく、実発電量との相関まで含めて、評価できます。

 太陽光発電は、長期間、いかに効率よく、発電できるのかが問われる分野です。設置してから1カ月、1年間で結果が出る分野ではありません。

 2010年に設置した評価施設は、年月を経てくることで、太陽光発電関連分野にとって有意義なデータや情報を提供できるようになり、より真価を発揮できるようになってくるでしょう。