「ジオテキスタイル」から派生

――防草シートでは、米デュポン社の「ザバーン」が知られていますが、機能的にすぐれているのでしょうか。

伊藤操子氏
伊藤操子氏
(京都大学名誉教授)

伊藤(操) 実は、かつて「ザバーン」は、「ジオテキスタイル(geotextile)」の第1号と言われました。「ジオテキスタイル」とは土木工事で法面や壁面の強度を保つために使われるシート資材です。道路などの建設でも、まずザバーンを地下に施工して、砕石を載せ、その上を舗装することで、地盤を安定化させる、という使われ方をしています。

 もともと地下で砕石と組み合わせて使う想定のため、透水性が高く、ポリプロピレン製で必ずしも紫外線に強いわけではありません。それを特に日本では、「防草シート」として、販売されるようになっています。本来、「防草」以外にも複数の機能があります。

 こうしたジオテキスタイルの一部のシートが、公園や家庭などでマルチ資材として手軽に使われ始め、単体での使用が一般化してしまった面があります。開発された経緯を振り返っても、砕石などと組み合わせて使うことに適しているのです(図12)。

図12●防草シートと砕石を組み合わせたケース
図12●防草シートと砕石を組み合わせたケース
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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伊藤(幹) 繰り返しになりますが、最初(第6回・前半)で強調したようにマルチ技術は、「雑草抑制」のほか、「保水効果」と「地表高温化の抑制効果」を持っています。ただ、有機資材だけ、防草シートだけでは、この3つを同時に発揮させるには限界があります。

 せっかくマルチ技術を使うならば、複数の資材を組み合わせ、環境改善効果や地域の特産に関連した有機資材を活用し、地域に貢献できるメガソーラーになってほしいと考えています(関連記事:「草刈りは回数で決めない。草高30cmを基準に」。緑地雑草科学研究所に聞く=第7回・前半)。

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