アブダビのプロジェクトが成り立つ理由

――アブダビでのプロジェクトについて、2.42米セント/kWhという世界最安の売電単価は、一般的に推定できる製造・販売原価を大きく割り込むような価格で太陽光パネルを供給しない限り実現できない、という指摘もあります。

 そのような指摘は、当てはまりません。必ず利益を出せるプロジェクトとなっています。発電事業としても、太陽光パネルの供給事業としても成り立っています。

 この発電事業には、アブダビ水電力省(Abu Dhabi Water and Electricity Authority:ADWEA)が主導し、丸紅とジンコソーラーが参画しています()。発電事業者となる特定目的会社(SPC)には、3者が合計で約2.2億米ドルを出資しています。

図⚫︎世界最大規模で、世界最安の売電額となる
図⚫︎世界最大規模で、世界最安の売電額となる
アブダビで開発中の出力約1.177GW(1177MW)のスワイハン太陽光発電プロジェクト(Sweihan Photovoltaic Independent Power Project)の完成予想図(出所:丸紅)

 この出資額以外に、約6.5億米ドルの融資を受け、合計で約8.7億米ドルの投資案件となります(関連ニュース1)。この融資の期間は、26年間です。

 まず、金融機関は、事業性に乏しいプロジェクトには融資してくれません。融資を確定していることからも、事業性の高いプロジェクト、参画しているジンコソーラーにとっても事業性のある案件であることがわかると思います。

 土地は、アブダビ政府から借ります。土地に関する折衝などが不要な上、賃料はほぼ無料となっています。

 また、SPCへの出資比率は、アブダビ水電力省が60%、丸紅とジンコソーラーはそれぞれ20%ずつとなっています。政府系が60%を持ち、われわれにとってはリスクを抑えられる構成となっています。

 発電量の多さもポイントです。日射量の多い地域である上、発電量を最大化するシステムの構成や配置を採用しています。

 2019年4月に稼働する予定で、発電電力は、25年間の電力供給契約に基づき、全量をアブダビ水電力会社(Abu Dhabi Water and Electricity Company:ADWEC)に売電します。

 連系先の送電線も、すべて政府が整備します。アブダビにとって、エネルギー関連で最大のプロジェクトとなり、かつ、エネルギー転換を担う案件のため、アブダビ政府の注力度合いが高いことを感じます。

 送電線に限らず、太陽光発電所の設置や運用に必要な基本的な設備は、ほぼすべてアブダビ政府が整備したものを活用できます。

 こうした点もあって、低い売電単価の下でも、プロジェクトやパネル供給が事業として成立しています。