「樹幹流」が雑草を抑制

――地面の被覆のほか、境界線への植樹によっても、雑草を防げるのですか。

伊藤(幹) 敷地の境界にある種の針葉樹や広葉樹を植えることで、美観を高めるだけでなく、敷地外からの雑草の侵入を防いだり、成長を抑制する効果があります。日本に自生する針葉樹はすべてこうした特性を持っています。

 これは物理的に種の侵入を減らすだけでなく、「樹幹流水」の効果もあります。「樹幹流水」とは、樹木に降った雨が幹から流れ落ちる水のことです。スギやヒノキなどの針葉樹の樹幹流水の多くは、葉から樹皮を伝っていく間にPH(酸度)が4近くの酸性を帯びます。そのため木の幹を中心に2~3m程度の範囲に草が生えにくくなります。

 広葉樹の中には、樹幹流水に成長抑制物質を含み雑草の発生が少ないものもあります。雑草抑制効果の高い日本自生種としては、針葉樹のほか、ヤマブキやサカキ、ヒイラギなどの広葉樹もあります(図7)。逆にコナラなど、土壌を肥沃にして雑草を増やしてしまう樹木もありますので、植樹の際には注意が必要です。

図7●雑草発生を抑制する効果の高い樹種
図7●雑草発生を抑制する効果の高い樹種
(出所:伊藤幹二氏・緑地雑草科学研究所理事)
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 メガソーラーは20年間、運用する施設です。こうした長期的な視点も求められる施設であれば、植樹まで含めて設計すべきです。北側はもちろん、園芸用の樹種であれば、南側に植えて、低く剪定できます。防草効果のほか、防風や防雪、防塵のほか、景観や自然環境と馴染むなど、多面的な機能が期待できます。

 (第5回・後半は、芝と植栽シートについて詳しく解説します)(関連記事:「メガソーラーに向いたシバとカバープランツ」。緑地雑草科学研究所に聞く=第5回・後半

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