「アレロパシー」が雑草を抑制

――冒頭で、クローバーは防草効果を目的とした被覆植物として適さない、とのことですが、そもそも被覆植物が防草効果を発揮するのはなぜですか。

伊藤(操) 被覆植物で地表が覆われた場合、ほかの植物にとって、まず物理的にスペースが閉鎖され、日光が遮られます。これが、雑草の発芽・発生を阻害します。加えて、根などから雑草などの成長を抑える化学物質を出す種類も多く、これは化学的抑制力(アレロパシー)と呼ばれます。

 例えば、多年草のダイコンドラは、ほふく茎で拡がるため、被覆植物としてよく使われます。この植物は、アレロパシーが非常に強く、見た目以上に防草効果の高いことで知られています(図6)。被覆植物には少なからずこうした特性があります。

図6●ダイコンドラを植栽した例
図6●ダイコンドラを植栽した例
(出所:伊藤操子氏・緑地雑草科学研究所理事)
[画像のクリックで拡大表示]

 防草対策として適しているのは、拡大力と再生力があり、長い年月にわたって持続性があること、季節による通年性、そして、ある程度、景観的な要素も必要です。加えて、事業性を考えると、肥料や水やりが不要で管理コストが低いことも重要です。また、雨が少なく日照の良いメガソーラー立地を想定すれば、乾燥に強い方が向いています。

 外観上、地表を覆っている植物だとしても、こうした要素を加味する必要があり、何でも雑草対策に使えるというわけではありません。

 こうした視点から、クローバーが防草対策に向かないのは、通年性の問題です。本来、寒地型で夏の高温と乾燥によって衰退し、雑草と置き換わる可能性があります。そもそもクローバーは、空中窒素を固定するため、イネ科の牧草と一緒に使われて、収量を高める役目を持っていました。これを雑草対策としてメガソーラーの下に植栽した場合、土壌が肥沃になるので、かえって雑草の繁茂を促してしまいます。

伊藤(幹) メガソーラーの雑草対策として安易に使われてしまったのは、クローバーを緑化に使っている造園関係者からの提案かもしれません。種を播くだけで簡単に植栽できることや、美観上も良いこと、そして何よりコストが安いことが背景にあると推測しています。しかし、本来、「やってはいけないこと」です。