ササを植えてきた日本人

伊藤(幹) ササ類も同様です。実はササは、もともと熱帯系の植物ですが、日本では北海道でもよく見かけます。それは、山の崩壊を防ぐために人間が植えてきたからです。日本は雨が多く、また北国では雪や凍土が融けると斜面が崩壊しやすくなります。ササを植えることでそうしたリスクを軽減してきたのです。加えて、水田に埋め込んで土壌改良にも使われるなど、稲作にも密接に関わっていました。

北海道内の道路法面に群生するササ
北海道内の道路法面に群生するササ
(出所:日経BP)
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 ササは葉によって地面を密に覆うことで、他の植物の成長を抑制します。加えて、落ちた葉が地表に積み重なっていくことでも、雑草を防ぐ効果は絶大になります。

――ササは、どんな形で植えつけるのですか。

伊藤(幹) ササ類のポット苗は、1970年代から生産され始め、1990年代には1000万近く出荷されたようです。最も多く使われたのはコグマザサでした。最近では、地域に自生するササをポット苗で購入して、植え付けるのが一般的になっています。地域の農林事業者などと連繋し、近くの山などに自生するササを移植するという形も可能で、コスト的には最も安いかもしれません。

 ササは、芝に比べても管理が容易で、年に1回程度、刈り込めば十分だと思います。日本のメガソーラーの除草対策では、最も適した手法になる可能性を秘めています(図1)。

図1●主要なササ類4種の特性
図1●主要なササ類4種の特性
(出所:京都大学大学院地球環境学堂・柴田昌三氏「緑化植物としてのササ類」、緑地雑草科学研究所「草と緑・7号」・2015年12月)
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 芝、ササとも、かつては日本の里山を支えてきた重要な植物でした。戦後、こうした場所の多くにスギ、ヒノキが植林されたので、日本人の多くはこうした歴史を忘れていますが、いまでも、国内の土木分野における緑化工法の基本は、芝かササです。

――植栽シートによるカバープランツの植栽工法とは、どんなものですか。

伊藤(幹) 透水性の高いシートを地面に敷き、そこに穴を開けてカバープランツを植え付けます。シートの上を茎がはって伸びることで徐々に地面を覆っていく工法です。この場合、シートにも防草効果がありますが、あくまでカバープランツの初期段階の成長を助ける役割で、防草シートのように長期間、雑草の発生を防ぐのが目的ではありません(図2)。

図2●植栽シートで施工したシバザクラの例
図2●植栽シートで施工したシバザクラの例
(出所:白崎コーポレーション)
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 芝やササは、通常、植栽シートを使わずに播種や張芝などの方法で植え付けます。植栽シートを併用するカバープランツには、ツル植物やシバザクラなど様々な植物があり、後ほど詳しく紹介しますが、いずれもシートを併用することで、少ない植え付け株で安定的に地表を被覆できるため、こうした工法を採用します(図3)。

図3●公園に植栽した芝の例
図3●公園に植栽した芝の例
(出所:ゾイシアンジャパン)
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