出力を平準化する蓄電池は重要

――北海道や離島では、出力の短周期変動対策として、蓄電池併設型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が稼働し始めました。また、九州本土にローカル系統の制約から長周期変動対策の蓄電池を併設したケースも出てきました。こうした動きをどう見ていますか。

山崎 変動電源である太陽光を普及させていくうえで、出力を平準化する蓄電池の役割はたいへん重要で、総論として太陽光との併設は推奨していくべきものと思います。これまでにも実証事業を実施したり、補助金制度で支援してきました。

 ただ、ローカル系統の状況に合わせて、系統連系の条件として蓄電池の併設とその運用方法をどのように位置づけるかは、個々の事例の状況を把握している各電力会社の判断になります。

――FIT制度の後、どんな形で太陽光を伸ばしていくか。イメージを持っていますか。

山崎 欧州では風力を主体にして再エネが伸びましたが、日本では地理的にも太陽光に向いた面があり、実際にFITで急速に拡大しました。ただ、20年後も、いまと同じようなFIT的な制度を維持することは、国民負担の点から難しいでしょうし、もはやそこまでして後押しする電源ではなくなっている可能性もあります。

 理想的には、20年後はFITのような支援策がなくても、太陽光への新規投資が自主的に継続され、長期安定な基幹電源として、定着することです。

電力システム改革と相性が良い

山崎 推進する分野としては、まず、屋根上太陽光など自家消費モデルには、住宅、事業所とも大きな可能性があると思います。今後もさらに伸ばしていく分野です。

 FIT制度は、作ってしまえば、あとは20年間、定額で売電できるので、ほっといてもよい、という風潮があります。しかし、本来、発電設備は、完成後にいかに発電して使ってもらうのか、という視点がたいへん重要なはずです。

 FITが終了すると、こうした側面が改めて注目されます。特に住宅や事業所の屋根上に設置した太陽光は蓄電池、さらには電気自動車(EV)などと組み合わせることで、自家消費する量を増やしたり、再エネ電力を使うスマートな生活を望む消費者をターゲットに売電したりするなど、様々な事業モデルが工夫できます。

 これは電力システム改革の目指す方向性と相性が良く、その面でも、太陽光は利用者の生活空間に入り込み、ライフスタイルを変えながら普及していく潜在力があります。「2019年問題」と言われますが、同年には、FIT期間の終了する約120万kWの住宅太陽光が、こうした新しい事業モデルの先陣を切る可能性があります(図2)。蓄電池を併設した自家消費モデルは最も有望な選択肢の1つに思います。

図2●住宅太陽光の累積容量の実績と予測。2019年以降、FIT終了後の住宅太陽光の電力取引が増える
図2●住宅太陽光の累積容量の実績と予測。2019年以降、FIT終了後の住宅太陽光の電力取引が増える
(出所:太陽光発電協会「PV OUTLOOK 2030」)
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 蓄電池込みの自家消費型太陽光がグリッドパリティ(購入電力より安くなること)を達成すれば、住宅分野の電力供給は、太陽光の自家消費が主体になり、商用電力は補助的な役割になる可能性など、これまでの電力システムが劇的に変わります。