「10~50kWの事業用低圧案件が心配」

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
(撮影:清水盟貴)

――2030年のベストミックスを考えた場合、買取期間の20年が終了して発電を止めてしまっては、長期的に安定電源とは言えません。

山崎 まさに、そこが重要で、新エネ課では、太陽光を安定電源として定着させるために「PV100年構想」を掲げてきました。FITの買取期間が終わっても、追加投資して、さらに発電事業を継続することで、初めて「基幹電源」と位置付けられます。ベストミックスで掲げた太陽光の64GWはそうした持続性の高い電源を想定しています。

 こうした視点から危惧しているのが、10kW以上、50kW未満の事業用の低圧連系案件です。事業用低圧案件の中には、土地の造成もせず単管パイプで架台を組み立て、その上に太陽光パネルを並べ、稼働後のO&M(運営・保守)も十分でないケースが多く見られます。こうした発電所が20年間、安定して稼働し続けられるのか、という問題です。そして、日本では認定容量の3割近くがこうした事業用低圧案件で占められています。

 こうした背景から、改正FIT法では、O&M体制の構築と実施をガイドラインに明記し、認定の要件としました。そうしたなかで「O&Mにそんなにコストがかかるなら、もう発電事業は止める」という発電事業者も出てくると見ています。まして、20年後には、今のような形の買取制度がなくなれば、廃止する事業用低圧案件が大量に出てくる可能性があります。

 そうなると、一時的にべストミックスの想定値(64GW)に達したとしても、そのうちの3割が次々と撤退してしまうと、そのインパクトはたいへんなものです。

 そう考えてみると、仮に新認定制度に60GW以上の太陽光が移行したとしても、実際に64GW分稼働し、持続的にその容量を維持するのは、そう簡単ではなく、楽観できません。

 こうした認識から、太陽光64GWの達成にはまだ多くの障害があり、今後も引き続き推進策を打っていく必要があると考えます。その結果、64GWを超えることになっても、64GWは「キャップ(上限)」ではないので、それはむしろ歓迎すべきことです。

 (インタビュー後半は5月19日に公開)