コスト低下で火力と遜色ない電源に

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
(撮影:清水盟貴)

――日本の保守的なエネルギー論者のなかには、電力系統に無理なく受け入れられる太陽光と風力の割合を「適性」と考え、「ドイツは太陽光と風力を導入し過ぎた」と、批判的に解説する専門家もいます。

山崎 もはや世界の議論は、そういう見方ではありません。では、2012年から2015年までに何があったのでしょうか。その間に再エネのコストが大幅に下がったのです。

 2015年ごろまでは、まだまだ再エネの発電コストは高く、「CO2削減や環境対策のためにどうやって導入するか」という位置づけでした。日本でも、FIT導入の1年目で買取価格40円/kWという時代でした。世界では20円/kWh前後でしたが、それでも火力発電に比べれば、コスト競争力はありませんでした。

 ところが、ここに来て、海外では、太陽光のPPA(長期購入契約)では3円/kWh台の値付けでの落札が現れ、風力では陸上でも洋上でも10円/kWhを切るような契約案件が出てきました。つい最近でも、洋上風力の電力を20年間、市場価格で購入する契約を結んだというニュースがありました。太陽光・風力が、市場価格まで下がってきたのです。

 化石燃料を使った火力発電と比べて遜色ないコストであれば、CO2削減という理由だけでなく、より積極的に基幹電源として使っていこう、というのが、世界各国のエネルギー政策の基本スタンスになってきたのだと思います。

――とはいえ、太陽光と風力は、お天気次第で発電しない時もありますし、「自然変動電源」として、「使いにくさ」は残ります。

山崎 そこに太陽光・風力を大量に導入する場合の課題があります。いかにコストが安くなっても、太陽光と風力だけでは、安定的な電力供給は実現できません。

 そのために「REインテグレーション」が重要になっており、世界中で様々な試みが始まっています。太陽光、風力の出力変動に対応し、いかにほかの電源を制御するのか。再エネが発電しない時間をどうやって埋めるのか。火力発電を待機させるのか。蓄電池を使うのか。こうした再エネを受け入れるための制御技術やコスト、制度的な仕組みを総合的に検討する必要が出てきたのです。

 再エネの導入増加に伴い、火力発電の稼働率は下がってきますが、安定供給の観点から必要な電源です。火力の事業性をいかに維持していくのか、という議論を巡り、「容量市場」が必要なのか否かも、世界的に試行錯誤が続いています。