温暖化目標の達成には「太陽光110GW」必要に

――政府は昨年、2030年のベストミックス(望ましい電源構成)を決め、そのなかで、再生可能エネルギー全体の構成比を22~24%とし、そのうち太陽光の構成比を7%(64GW)という導入目標を掲げました。

伊藤 政府の掲げたベストミックスは、原発の運転期間を通常の40年から60年まで延長することなどを前提に、原発の構成比率を22~20%としました。また、再エネに関しても、地熱やバイオマス発電の伸長に期待している面があります。

 しかし、原発の再稼働や60年延長は、そう簡単ではありません。また、地熱やバイオマスもベストミックスで想定した導入目標に届かない可能性が高いとみています。そのなると、「2030年度に2013年度比26.0%減」という日本が国連に提出した温室効果ガス削減目標の達成は困難になります。今後のベストミックスの再検討のなかで、電源構成の見直しが必須になります。

 我々の試算では、太陽光の導入量を、いまの想定値の64GWから、さらに伸ばし110GW程度まで増やすことになると予想しています。CO2を出さない電源のなかで、ベストミックスの想定値よりさらに積み増せるものは太陽光しかないからです。

――COP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)で合意した「パリ協定」では、世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える目標を掲げ、1.5度未満を目指すことの重要性も明記するなど、温室効果ガス排出を実質ゼロにする方向性が打ち出されました。

伊藤 パリ協定に基づく新しい国際枠組みでは、各国が自主的に削減目標を設定しますが、実効性を持たせるため、5年ごとに削減目標を積み増す方向で見直すことと規定しています。つまり、日本の「2013年度比26.0%減」という目標は、今後さらに削減量を増やさざるを得ない状況もあり得ます。そう考えると、残された温室効果ガス削減手段として、長期的に太陽光を200GWまで増やすことさえ視野に入ると見ています。

 国内の太陽光はここ数年、急増していますが、ようやく20GWを超えた程度です。ここ数年の太陽光の伸びは、一時的な「ブーム」ではなく、本格導入のほんの入り口に過ぎません。次はまずベストミックスの64GWを目指し、その後もさらに増え続けていくと見るべきです。