大面積化で製造コストを削減

――「シリーズ5」を飛ばして、一足飛びに「シリーズ6」の市場投入に踏み切ったわけですね。難しい「大面積化」を前倒ししたのは、なぜですか。

FS 長年、研究・蓄積してきた「VTD (Vapor Transport Deposition: 気相輸送法)」という独自の薄膜製造法によって、商業生産のめどが立ってきたからです。これは基板を移動させながら、半導体材料を形成する手法で、大面積での均質な成膜に優れています。

 加えて、中国パネルメーカーの低価格攻勢によって、ここ半年ぐらいでパネル価格が急落したことも、「前倒し」決定の背景にあります。ここ数年、業績が順調に推移しているので、この時期に革新性の高い次世代パネルに移行してしまおうと判断しました。

 大面積化が可能になれば、ワット当たりの単価を一気に下げられます。いまの価格下落が一時的なものかどうかは、わかりませんが、いまの価格水準を前提に競争力を維持する必要があります。他社に先んじて思い切った生産革新に踏み切ることが重要なのです。  

――世界の太陽光パネル大手は、多額の設備投資によってシェアトップに立つと、財務が悪化して経営が苦しくなる、という繰り返しに見えます。ファースト・ソーラーは大丈夫ですか。

FS 確かに大面積化のためには、装置が大型化し、設備投資も増えます。ただ、ファースト・ソーラーの経営陣は、財務的に大変、慎重なスタンスのため、現在、借金がなく、いまなら自己資金で、新規設備への投資も賄えます。

 そもそも我々は、必ずしも規模拡大を目指しているわけではありません。品質や信頼性、顧客への価値の提供という面で、リーダーシップを取りたいですが、シェアが目的ではありません。ビッグであることが、経営的な安定を意味しないことは、ここ数年の太陽光パネル業界を見れば明らかです。シェアを高めるための、安値競争に参加するようなことはありません。