米アップルは3月、同社に半導体パッケージ関連製品を供給しているイビデンが、アップル向け製品の製造を100%、再生可能エネルギー発電電力で賄うと発表した(関連ニュース1同ニュース2)。アップルは、製品製造を含む自社の事業活動において、消費電力の100%を再エネで賄うことを目指しており、この一環となる。「アップル向け製品製造を100%再エネで」と公約した日本企業は初めて、としている。イビデンの髙木隆行取締役・専務執行役員(生産推進本部長、CSR推進室担当、エネルギー統括部担当)に聞いた。

イビデンの髙木隆行取締役 専務執行役員
イビデンの髙木隆行取締役 専務執行役員
(出所:日経BP)

――アップルだけでなく、グローバルに展開する大手企業の中には、自社による再エネ活用の拡大だけでなく、取引先に対し再エネ比率の引き上げを促す企業が出てきました。例えば、アップルの場合、調達先企業には、これまで求めてきた品質やコストなど製品面、財務内容など企業の持続性と同様、再エネ比率も調達の条件に加えているのでしょうか。

髙木 アップルとの取引や今回の発表内容の詳細については、守秘義務契約に反してしまうので、明らかにできません。

 ただし、これまでのアップルの発表からも、企業が果たすべき社会的責任(CSR)の一つとして、サプライチェーンにおける再エネ比率の向上を重視していることが想像できると思います。

――イビデンにおける再エネ発電事業の経緯と現状について、教えてください。

髙木 イビデンは、今ではパソコンやスマートフォンなどで使われているプリント配線板や半導体のパッケージ関連基板、ディーゼル車の黒鉛除去フィルターなどが、大きく成長していますが、祖業は水力発電です。

 揖斐川電力として1912年(大正元年)に設立され、岐阜県の揖斐川の上流に水力発電所を開発・運営し、当初は紡績会社などに送電していました。水力発電所の数が増えてくると、発電電力を使って他の事業も展開し、現在の多角的な事業内容に発展しました。

 現在、運営している揖斐川の水力発電所は、揖斐川町にある東横山発電所、広瀬発電所、川上発電所の3カ所で、合計出力2万7900kW(27.9MW)です。

 実は、3カ所の水力発電所の合計出力は、この10年間で約10%向上しました。導水路や、水の流れを回転エネルギーに変えるための水車、発電機の革新によるもので、こうした設備の改修や更新によって実現しました。

 コージェネレーション(熱電併給)システムも4基・合計出力約2万3710kW(23.71MW)を運営しています。水力発電は売電し、コージェネの発電電力は自家消費しています。

 太陽光発電は、再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)の施行を機に、本格的に開発・運用し始めました。

 FIT以前に導入した太陽光発電システムもあります。新本社の屋上の出力約47kW、大垣中央事業場の新工場の屋上の出力約600kWの2か所です。これらは自家消費しています。

 FITを活用すれば、自社グループの建物の屋上や遊休地を太陽光発電所として活用し、発電事業として成立することから、参入を決めました。子会社のイビデンエンジニアリング(岐阜県大垣市)が、FITによる太陽光発電所を開発しています。

 これまで、FITによる太陽光発電所として、20カ所・合計出力約12MWを開発・運営しています。19カ所が稼働済みで、残り1カ所は2017年7月に運転開始の予定です。