昨年は、集中豪雨や台風に被災した太陽光発電設備が相次ぎ、今年1月には消費者庁が住宅太陽光の火災事故のレポートを出すなど、太陽光のO&M(運用・保守)についての課題が指摘されている。固定価格買取制度(FIT)の改正時に、太陽光の「事業計画策定ガイドライン」の作成に関わった産業技術総合研究所の大関崇氏(同所・太陽光発電研究センター システムチーム・研究チーム長)に太陽光のO&Mのあり方などについて聞いた。

「予防保全」か「事後保全」か

産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター システムチームの大関崇・研究チーム長
産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター システムチームの大関崇・研究チーム長
(撮影:清水盟貴)

太陽光発電設備は、従来の集中型電源システムとは、さまざまな面が異なります。O&M(運用・保守)は、どうあるべきでしょうか。

大関 まず、太陽光発電設備は、適切な場所に、適切な設備を、適切な手法で設置すれば、かなり丈夫で長期間、安全に運用しやすい設備だと感じています。

 ただ、それがしっかりできていない発電所も目立ち、問題が生じている印象です。

 当初、太陽光発電設備は、「メンテナンスフリー」のような表現で販売している企業もありました。確かに、火力発電のような集中型電源に比べると、メンテナンスフリーに近い電源とも言えます。しかし、メンテナンスが「ゼロで良い」というわけではありません。

太陽光発電といっても住宅用からメガソーラー(大規模太陽光発電所)まで、その規模やシステムには違いがあります。

大関 まさにそこがポイントです。太陽光発電設備は、設置環境や状況によって、メンテナンスの考え方に濃淡が生じやすく、逆に言えば、幅を持たせながら運用できます。

 例えば、「予防保全を万全に施すべきだ」という考え方がある一方で、「事後保全が万全であれば良い」という見方もあり、これは状況によって違いが出てきます。

 太陽光発電に限らず、いわゆる分散型電源は、拠点数が多く、規模のバラつきも多くなります。極端なことをいうと、電力系統に大きな影響を与えやすい巨大な出力規模の発電所でなければ、1カ所くらい稼働が止まって出力がゼロになっていても、それほど大きな問題は生じないでしょう。

 こうした面からは、その発電所の稼働が止まらないように、万全な予防保全を施していないといけないのでしょうか。本来は、致命的なリスクが生じない範囲において、事後保全の体制が万全であれば、予防保全はそれほど必要でないかもしれません。

 例えば、事故が生じた時に、迅速に正確に警報(アラート)が発され、すぐに現地に駆け付けて対処できるのであれば、法定以外の定期点検はなくても良いかもしれません。こういう手法も考えられるでしょう。