「21円と24円案件」で75%

――2017年には10%を超える水準にまで上がっていますが、逆に言うと、この水準でないと、販売しにくくなってきたということですか。

井上 そうです。もちろん背景には、システム価格の低下で、利回りを上げられる環境になってきたこともあります。ただ、既述したように、利回りを下げなくても投資家が見つかると見込めば、販売価格を維持して利幅を確保します。

 2016年以降、利回りが上がってきたのは、FIT設備を対象にした税制優遇制度がなくなったことに加え、FITによる売電単価の低下も背景にあります。売電単価の下落によって売電収入のキャッシュ(受け取り金額)が減っていく分、投資家としては「利回り」を狙いにいく傾向が強まります。

 開発事業者は、こうした投資家の意識を感じ取って、海外製パネルの採用などでシステム費用を抑えたり、過積載率を高めたりして、それでも足りなければ、自らの利幅を減らすことで、10%を超える魅力的な表面利回りを実現していると考えられます。

――事業用低圧分野には、FIT初期の売電単価40円/kWhや36円/kWhの設備認定を取得したまま建設しない「滞留案件」も多くなっています。掲載物件には、こうしたFIT初期の滞留案件を小出しにしたと思われるようなものもありますか。

井上 掲載案件の売電単価を年ごとに集計して見ると、概ね、前の年度の売電単価を持つ案件が最も多くなっています(図3)。確かに2016年を見ると、40円/kWhと36円/kWhの初期案件が17%含まれていましたが、2017年には1割を切り、24円/kWhと21円/kWhの案件で75%に達しています。

図3●売電単価の分布
図3●売電単価の分布
(出所:グッドフェローズ・タイナビ発電所の集計データ)
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 投資用の土地付き低圧案件に関していえば、FIT初期案件を少しずつ小出しに販売していくという事業者はほとんどいないと思います。認定を取得した案件から投資家を募って販売し、1年程度で完工して売電を開始するというケースが一般的です。