表面利回りが10%台に上昇

――事業用太陽光の売電単価は、固定価格買取制度(FIT)の開始時の42円/kWhから、2017年度は21円/kWhまで下がりました。それでも、事業用低圧太陽光の投資物件としての魅力は、下がっていないのですか?

井上 「タイナビ発電所」に掲載した案件の表面利回りを年ごとに集計すると、確かに2013年の11.36%から2015年には9.79%まで下がりましたが、この年を底に、ここ2年は上昇しており、2017年には10.37%まで回復しました(図2)。

図2●システム単価(kW)と表面利回りの推移
図2●システム単価(kW)と表面利回りの推移
(出所:グッドフェローズ・タイナビ発電所の集計データ)
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 土地付きの事業用低圧太陽光の表面利回りは、「10%」が目安になっています。10%の利回りを実現できれば、魅力的な投資物件として、買い手が付くということです。

 確かに売電単価は半分に下がりましたが、この間、太陽光パネルなどのシステム単価の平均は、ピークの約41万8004円/kWから今年には25万4871円/kWまで下がり、また過積載によって発電量が増え、設備利用率も上がっています。加えて、開発・販売事業者は、当初よりも利幅を減らすことで、利回り10%を確保しています。

 逆に言うと、システム単価の低下と過積載などの工夫により、ある程度の利幅を確保しつつ、十分な利回りを確保できているということです。

――図2のグラフを見ると、2015年はシステム単価が下がっているにもかかわらず、表面利回りも下がっています。この背景は、どんな要因が考えられますか。

井上 システム価格と表面利回りの両方が下ったということは、システム価格が下がっても販売価格を下げずに利益を確保したということです。当然ながら、販売価格は需要と供給で決まるので、システム価格が下がっても、投資家が現れると判断すれば、販売価格は下げません。2015年度までは、FITを利用した太陽光設備に対し、節税効果のある優遇税制があり、それを目当てにした投資家は多少利回りが低くても購入しました。

 加えて、考えられるのは、2015年頃には、固定価格買取制度(FIT)の改正を睨んで、権利売買が盛んになり、仲介業者が増えました。その結果、仲介業者の手数料が増えた分、投資家に渡る際の利回りが下がった面もあったと思います。

 ただ、2016年以降、優遇税制の対象はFITを利用しない自家消費型の太陽光などに限定されました。こうした環境変化に対応し、2015年の利回り水準(平均9.76%)では売りにくいと判断し、開発事業者の努力によって、利回りが上がってきました。