O&M義務化と言っても…

――改正FITの大きな変更点の1つに、「保守・点検の義務化」が挙げられます。事業用低圧案件では、特に保守体制の疎かなサイトが多いことが懸念されています。実際に事業用低圧案件では、発電量の遠隔監視やO&M(運営・保守)を契約していないサイトが多いですか。

井上 O&Mの重要性に関しては、弊社でも10回以上セミナーを開催するなど、啓蒙に取り組んできました。まだ、全発電事業者に周知されたとは言えませんが、徐々に認識が高まっていると思います。

 事業用低圧案件の場合、ある調査によると遠隔監視の普及率は2割程度とされています。ただ、ここ1年に開発された案件では、遠隔監視とO&M契約が付いているものが多くなっているように感じます。除草対策にしても、防草シートや砂利などで対策を施している案件が着実に増えています。

 ただ、FIT初期に発電所に投資した事業者は、「太陽光はメンテフリー」との触れ込みで購入しており、実際にこれまでに大きな不具合がなければ、お金を生まないO&Mに費用をかけたくないと考えるオーナーも多いのが現実です。

 「O&Mが義務化」と言っても、O&M体制を整え、記録を残すことなどを求め、実行しなかった場合、認定失効の可能性があるとの内容で、車検のように定期的に点検・保守を受けないと免許(認定)が取り消されるという仕組みになりませんでした。「その程度の規定なら、O&M契約は必要ない」と考えるオーナーもいるのが現実です。

――節税メリットで投資した発電所オーナーは、稼働後の発電状況に無関心で、O&Mへの取り組みにも問題があるとの声も聞きます。

井上 必ずしもそうとは言えません。節税目的で購入した太陽光発電所でも、遠隔監視してO&M契約もきっちりと結んでいるサイトは多いと思います。一般的に企業として太陽光発電所に投資・購入したケースは、運転管理にも配慮していることが多いようです。

 むしろ、O&M意識が乏しいのは、個人のオーナーという印象です。個人投資家が太陽光を購入した場合、どうしても「コストのかかることはしない」との短期的な発想になりがちです。こうした発電所に将来的に不具合が起きやすくなるのではないかと心配しています。