市は道義的に「全面撤去」を求める

 こうした政府への要望が実現するとしても、2017年4月以降になる。そこで瀬戸市は5月20日、フジ建設に対し、県とは別に、「太陽光パネルの全面撤去と森林復旧」を求める申し入れを行った。法的な拘束力はないものの、「博覧会の理念」に基づく、道義的な対応を求めたものだった。

 同時に市は、「公共用物の管理に関する条例」に基づく、是正計画書の提出を求めた。メガソーラー用地内には、市所有の公共の道である「里道(赤線)」が約270mにわたって通っており、開発によって寸断されていた(図3)。県の求めに応じて提出されたフジ建設の是正計画書では、発電施設を迂回する形で里道を復旧していた。

図3●里道がパネルで寸断されている
図3●里道がパネルで寸断されている
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 5月30日、フジ建設は市の申し出に対し、「全面撤去は難しい。多額の投資をしており、社員を路頭に迷わせることになる」などと回答した。これを受け、伊藤保徳市長が遺憾の意を表明するとともに、フジ建設に対し、里道部分に設置したパネルの撤去と原状回復を要請した。加えて、万博の理念を踏まえ、緑化回復など「理念の具現化策」を文書で提出することも申し入れた。

 「全面撤去を求める姿勢を維持しつつも、まずは里道部分の権利回復を進める」との現実路線に切り替えた格好だ。

 フジ建設は6月29日、これに応じ、里道部分のパネル撤去と、「理念の具現化」の1つとして、売電金額の一部を市か環境団体に寄付するなどの新たな内容を回答した。また、回復する里道には、両側に幅6mの林帯を設け、開発区域の外周に幅8mの回復緑地を設けるなどの緑地対策も織り込んだ。