東北大学 大学院 工学研究科の植松 康教授
東北大学 大学院 工学研究科の植松 康教授
日本風工学会の会長で「太陽光発電システム風荷重評価研究会」の委員長を務める(撮影:日経BP)

 突風や台風による太陽光発電所のトラブルが相次いでいる。6月15日には群馬県伊勢崎市で(関連ニュース)、8月25日には福岡県柳川市や行橋市で、基礎・架台から太陽光パネルが吹き飛んだり、損壊した上に、周辺の道路や建物などに被害を及ぼしたことが報じられた。日本風工学会会長で、同学会の「太陽光発電システム風荷重評価研究会」の委員長も務める、東北大学 大学院 工学研究科の植松 康教授に、こうした状況への見解を聞いた。

――突風や強風による太陽光発電設備の損壊が続いています。こうしたトラブルをどのように分析していますか。

植松 太陽光発電の普及は、たいへん良いことです。ただ、風や雪などへの対策を正しく検討していないように見える設備が少なくありません。

 どんな分野でも、普及を促進するために、最も効果的なのは、コスト削減です。コストを安くすることは、必ずしも「粗悪なもの」を生み出すことと直結しませんが、短絡的に考えれば、「粗悪なもの」ができやすくなります。

 風による太陽光発電設備への被害は、2015年に入って多く知られるようになりました。ただ、こうした被害は、以前からありました。主に建物の屋上に設置された設備の被害でした。ただし、その情報はほとんど報じられず、表面化していなかっただけです。

 屋上設備の場合、被害を受けた後、すぐに片付けてしまうし、敷地外まで吹き飛んだ場合でも、すぐに撤去していました。このため、報道関係者による取材も限られましたし、発電事業者や設置を担当した事業者も、こうしたトラブルは隠したがります。

 ここにきて、トラブルが目立つようになった理由は、いくつかあります。まず、太陽光発電が格段に普及したことです。

 特に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)など大規模になると、損壊が生じた場合、人目につかずに片付けることが難しくなります。その間に、報道関係者が取材し、激しく損壊した太陽光設備の動画や画像がニュースで流れます。

 立地の変化も、表面化するようになった理由の一つです。メガソーラーは当初、人里離れた場所に多く設置されました。だが、最近では、市街地に近い場所で、ちょっとした空き地があれば、中規模な太陽光発電設備を設置する例も増えています。