対岸にも、背の高い営農型
内水氾濫が生じたのとは逆の、貴志川の右岸でも、田畑などが広く浸水していた。これは、氾濫ではなく、大雨によって貯まった水によるものとみられる。
こうした場所にも、太陽光発電所が立地していた。ただし、通常の地上設置型ではなく、営農型(ソーラーシェアリング)だった(図6)。低圧配電線に連系している。
稲が植えられている田んぼに約3mの柱を立てて、その上に間隔を空けて細長い太陽光パネルを設置している。
藤棚式と呼ばれるソーラーシェアリングの方式で、構造上、濁流で支柱が倒れない限り、太陽光パネルが浸水するリスクは小さい。加えて、今回の場合、接続箱も高い位置に設置されていることから、ある程度の浸水対策も意識した設計と思われる。
一般的に、大雨によってたびたび浸水してきた地域では、太陽光発電所の開発を断念することが多い。
しかし、今回の貴志川近くの地域では、雪国のように太陽光パネルの設置高を上げたり、接続箱や連系設備を高い場所に設置したりして、敷地内に水が浸入しても、パネルなどの設備が水没しない設計としたうえで、発電事業に取り組んでいる。
こうした背の高い架台を使った浸水に備えた太陽光発電所は、東南アジアなどの熱帯地域の一部でも見られる(図7)。雨季には、池のように水が満ち、船で行き来するような状態になる。