9月10日、台風18号の影響による記録的な豪雨が続き、茨城県常総市では、鬼怒川の堤防が決壊したり、堤防を越えて川の水が溢れ出る「越水」による被害が生じた。
常総市と下妻市の2カ所の観測点で、鬼怒川の水位が、1931年の観測開始以降、最高を記録した。常総市の観測点では、水位が最高8.06mに達した。
溢れ出た場所のうちの1カ所は、鬼怒川の東側に位置する若宮戸地区にある、複数の太陽光発電所に隣接する川岸だった(図1、関連ニュース1)。太陽光発電所に隣接する川岸を含めて、7カ所で越水し、堤防の中から水がしみ出す「漏水」も23カ所で生じた。
太陽光発電所に隣接する川岸には、人工堤防がなかった。そして、自然堤防の役割を担っていた丘陵部が、出力1.8MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設時に削られていたことが、越水を引き起こした要因の一つとなった可能性を指摘されている。このメガソーラーより川沿いの隣接地には、低圧送電線に接続する50kW未満の三つの太陽光発電所が位置している。
鬼怒川を管理する国土交通省・関東地方整備局は、今回の越水に関連し、自然堤防が削られた後に講じていた対応などについて9月19日に発表した。
この発表では、掘削前の「最も低い場所と同程度の高さ」を確保するために、同整備局がメガソーラー事業者の土地を借り、土嚢を設置するに至った経緯として、以下の理由を挙げた。
「いずれの太陽光発電所も河川区域の外に位置すること」、「国土交通省には、自然堤防を削ることに対する権限がないこと」、「自然堤防が削られ始めた後、近隣の住民や常総市からの要望を受け、現状の地盤の高さで残すように申し入れたが、合意に至らなかったこと」――という3点である(関連ニュース2)。
10月13日には、自然堤防の掘削と越水との因果関係を否定する内容の調査結果を公表した。削られる前の自然堤防のうち、一番低かった場所よりも、越水時の現地の水位は約70cm高くなっていたとしている(図2)。
もし、自然堤防を削っていなかったとしても、最も低い場所などで、最大約70cmの越水は免れなかったことになる。
また、太陽光発電所の隣接地より少し下流でも、越水が生じていた。この場所では、越水によって自然堤防が崩れ、水の勢いで地表が削られる「深掘れ」が、深さ約6mまで生じていた。