家電や自動車のようなリサイクル法を求める意見も

 調査の中で、排出者や産廃処理事業者が、太陽光パネルが含んでいる可能性がある有害物質に関する情報を、太陽光パネルメーカーに照会した例で、パネルメーカーがどのように対応したのかも公表している。

 2社の排出事業者、3社の産廃処理事業者が、太陽光パネルメーカーに対して、有害物質の含有の可能性に関する情報を照会した。

 この照会に対する対応として、国内の太陽光パネルメーカーから情報を得られた例がある一方、海外のパネルメーカーからは、企業秘密などを理由に有害物質に関する情報の提供を断られた例があった。

 太陽光パネルの購入者でないことを理由に、有害物質に関する情報の提供を断られた例もあった。

 「企業秘密」や「太陽光パネルの購入者ではない」といった理由で、産廃処理事業者が、処理する太陽光パネルの有害物質に関する情報の提供を断られる状況では、一様に適切な処理をするのは難しくなる(図3)。

図3●太陽光パネルメーカーに情報開示を拒まれた例もある
図3●太陽光パネルメーカーに情報開示を拒まれた例もある
台風による水害で被災した結晶シリコン型太陽光パネルの例(出所:日経BP)
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 総務省では、関連事業者や地方自治体を調査する中で、使用済みパネルの有害物質に関する情報について、型番や製品名からweb上で検索を可能にする、または、太陽光パネルに刻印する、仕様書に明記するなど、容易に確認できる仕組みの整備を求める意見が聞かれたとしている。

 一方、太陽光パネルメーカーが、使用済みパネルの回収・マテリアルリサイクルに関し、一定の関与を表明しているのは、カドミウム・テルル系の化合物型パネルを製造・販売している米ファースト・ソーラーが知られている。国内メーカーは、自主的な回収・マテリアルリサイクルに取り組んでいない。

 ファースト・ソーラーは、廃棄を求めるユーザーに対し、使用済みパネルの撤去(取り外し)方法と梱包方法を教示した上で、ユーザーに発送してもらい、自社工場においてパネルを破砕し、カドミウムを含む化合物とガラスを分離している。

 この回収費用と破砕・分離費用は、ファースト・ソーラーが負担している。原資は太陽光パネルの販売価格に算入されており、その資金を別途、管理している。これにより、かりにファースト・ソーラーが倒産しても、回収・リサイクルは継続できる体制を構築しているという。総務省の報告書には、こうした例も紹介している。

 太陽光パネルの廃棄は、今後、年月を経るとともに大幅に増えてくることが見込まれている。

 総務省の調査では、こうした大量廃棄時代を見据え、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)や使用済み自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)と同様の法制度を整備し、拡大生産者責任(EPR)の考え方に基づき、メーカーによる回収・リサイクルを義務化すべきなど、製造業者の費用負担によって回収・リサイクルする仕組みの構築が必要との意見がみられたという。

 一方で、一部の処理業者からは、メーカーによる回収処理システムについて、自社が処理に参加できなくなることを理由に反対する意見もみられた。

 現実の使用済みパネルのマテリアルリサイクルの状況をみると、さまざまな課題があり、事業的に確立されている状況にはない。

 リサイクル技術の開発には一定の進展がみられ、一部で事業化する動きがあるものの、処理コスト、排出量が少ないこと、使用済みパネルの大部分を占めるガラスの販路の確保などの課題が残っている。

 こうした状況の中で、現状では、災害という限られた状況、数量の使用済みパネルですら、適正な処理が十分になされていないことを、総務省は問題視し、勧告した。