どの市町村も危険性を注意喚起せず

 総務省が調査したのは、2015~2016年度に、地震や豪雨、突風などによって太陽光発電システムが損壊したことが確認された、熊本などの6市町村などである。

 「破損パネルの感電などの危険性の認識状況」、「地域住民などへの周知の状況、破損パネル発生時の感電などの防止措置の状況」について調査した。その結果、いずれの市町村も、危険性を十分に住民に注意喚起していなかったという。

 「危険性が十分認識されず、地域住民に対する周知や、損壊現場における感電などの防止措置が迅速に講じられていない状況がみられた」としている。

 例えば、台風の影響で被災した太陽光発電所(図2)では、感電などの防止措置が講じられないまま、破損パネルがそのまま存置されていた。その後、この破損パネルを引き取った産業廃棄物処理業者が、溶出試験を実施したところ、省令に基づく基準値を上回るセレンが検出されたという。

図2●台風の影響による水害で被災した太陽光発電所の例
図2●台風の影響による水害で被災した太陽光発電所の例
CIGS化合物型太陽光パネルを採用(出所:日経BP)
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 セレンは、CIS化合物型太陽光パネルの製造に使われ、太陽電池セル(発電素子)を形成している薄膜を構成する成分の一つである。

 また、地震によって被災したパネルは、公設の仮置場では感電などの防止措置が講じられていた。しかし、仮置場に搬入されたのは、震災の発生から長期間が経過した後だった。

 総務省では、「このように、感電などの危険性が現場に十分浸透しておらず、適切な防止措置も実施されていない現状のままでは、今後、災害が発生し、太陽光パネルが破損した場合、被災現場において、地域住民の感電や有害物質の流出が起こる恐れがある」と指摘している。

 そもそも、太陽光パネルが被災した6市町村は、破損パネルによる感電の危険性や、有害物質の流出の危険性を認識していなかった。中には、災害発生から約3カ月間経過した時点で、感電の危険性を認識した市町村や、今回の総務省による調査時に、初めて有害物質の流出の危険性を認識した市町村もあったという。