約3カ月間、そのまま存置

 残り3市町村では、太陽光発電事業者が産業廃棄物として処理した。

 ただし、産業廃棄物処理業者に引き渡すまでの約3カ月間、設置場所に破損したままの状態で存置していた例があるなど、迅速な安全確保や環境保全の措置が必要な状況がみられたとしている。

 産業廃棄物として処理した太陽光発電所の例では、被災後に電気主任技術者が設備の遮断などの措置は講じたものの、フェンスは倒壊したままの状態で、産業廃棄物処理業者に引き渡すまでの間、破損パネルは現地に約3カ月間存置していた。

 破損パネルは、再使用可能なものはリユース業者に有価で引き渡し、再使用できないものは産業廃棄物処理業者に有価物として売却した。この産業廃棄物処理業者が破損パネルを溶出試験したところ、基準値を上回るセレンが検出された。

 別の太陽光発電所の例では、被災から約3カ月後に、業者に依頼してケーブルを切断し、設備を切り離した上で破損パネルを撤去し、産業廃棄物処理業者に引き渡した。それまでの間、現地にそのままの状態で存置していた。

 ケーブルの切断とパネルの撤去、産業廃棄物処理業者への引き渡しまでに約3カ月間を要した理由は、発電事業者と保険会社との間で、補償などに関して調整しており、破損パネルの処理の方針が決まらなかったためとしている。この事業者は、環境省のガイドラインの存在を知らなかった。

 この発電所の破損パネルは、産業廃棄物処理業者が破砕処理した後、鉄や非鉄、その他に仕分けられ、鉄は製鋼所、非鉄は非鉄製造業者にそれぞれ出荷され、その他はスラグなどとして、建材、路盤材、砂代替品などとして再資源化された。

 今回、発表された調査結果では、発電事業者が産業廃棄物処理業者に委託し、処理している比較的、優良な例が紹介されているが、「メガソーラービジネス」による取材では、被災から復旧後にも、近隣の道路脇に水没・浸水した太陽光パネルを、野ざらしで置き続けているメガソーラー(大規模太陽光発電所)もある(図4)。

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図4●復旧後も、近隣の道路沿いに被災パネルを野ざらしで置き続けている例
図4●復旧後も、近隣の道路沿いに被災パネルを野ざらしで置き続けている例
低気圧と梅雨前線による大雨で生じた水害で被災。道路の左に復旧した太陽光発電所が見える(出所:日経BP)
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 総務省では、これらの状況から、環境省に対して勧告し、「経済産業省と連携して、地方公共団体・事業者に対し、破損パネルによる感電や有害物質の流出の危険性、地域住民などへの注意喚起および感電などの防止措置の確実な実施について、周知を徹底する」ことを求めた。

 次回は、使用済みパネルの適正処理・リサイクルの際に必要となる、主に有害物質に関する情報提供などに関する調査と勧告について、紹介する。