無効電力の比率が増えると誤認も増える?

 中部電気保安協会が電気保安管理業務を受託している太陽光発電所で起きたのは、以下のような例です。複数の太陽光発電所で生じました。

 特定の太陽光発電所において、従来型能動的方式の単独運転防止機能が働いて、PCSが稼働を停止することが続きました。系統側の停電が頻発したり、太陽光発電所側の電気的な障害が続いたわけでもありません。

 原因を探ってみると、九州電力管内における例と同じように、PCSの能動的方式の単独運転防止機能に特有の症状だということがわかりました。

 該当するPCSの従来型能動的方式の単独運転防止機能は、系統に常に信号を受発信し続け、単独運転防止のために送っている無効電力の送電時と戻ってきた時の周波数などの変化を見ていました。戻ってきた無効電力の周波数のズレが一定以上に大きくなると、単独運転として検知し、PCSの稼働を止めます。

 この太陽光発電所の近隣には、新型能動的方式の単独運転防止機能を持つPCSを備えた発電所があり、同じ送電線に連系していました。

 どうやら、当該発電所のPCSから発生する能動的方式の信号に、隣接する発電所の新型能動的方式の単独運転防止のための無効電力や信号が加わることで、電気の位相変化を助長させ、PCSの稼働を停止したようです。

 中部電気保安協会では、こうした単独運転の誤認によるPCSの稼働停止が相次ぐ太陽光発電所向けの対策は、個別に講じています。

 原因には、解明しきれていない部分もありますが、解決策として、元々、課されていた力率が緩和された太陽光発電所もありました

 力率制御は、正確には「力率一定制御」と呼びます。系統の電圧上昇を抑制する目的の措置で、変電所からの送電距離などに応じて電力会社から指定された力率に応じて、無効電力を系統に送る制御を指します(無効電力の関連コラム力率制御の関連コラム1同コラム2)。

 こうした発電所では、指定された力率に応じて、太陽光発電電力の出力が、連系協議で規定された出力に対して一定の比率を超えると、無効電力を出力するように制御します。

 系統連系規程では力率制御の目安は85%、つまり、無効電力の出力は最大で15%と決められています。「85%」を指定された太陽光発電所の場合、連系で認められた出力に対して、太陽光発電出力が85%を下回っている状況では、無効電力を送電していませんが、85%を上回った状況では、上回った比率分に応じた無効電力を送電しています。

 中部電気保安協会の顧客の太陽光発電所の例では、力率制御のための無効電力を送電していた状況で、従来型能動方式の単独運転の誤認が増えてPCSが停止する傾向がありました。無効電力の出力が増えるほど、この誤認が増えるのではないかと推測できそうです。

 中部電力と交渉し、例えば、90%の力率制御を課されていた太陽光発電所の場合、96%に緩和することで、この障害が解消するかどうか様子を見たところ、単独運転の誤認が解消され、かつ、系統の送電品質にも悪影響が及ばないと確認されたことから、96%に力率が緩和された例もあります。