太陽光発電所で多く起きているトラブルの一つが、落雷によるものである。今回から、雷対策などを手がけるサンコーシヤ(東京都品川区)による、落雷に伴う太陽光発電設備への影響や、その対策などを紹介する。

 同社は、1930年(昭和5年)に創業し、電力や通信、鉄道といった分野を中心に、雷に関する調査やコンサルティング、落雷対策用の機器の製造・販売などを手がけている。また、子会社のフランクリン・ジャパン(神奈川県相模原市)では、日本で唯一という、全国を網羅した落雷観測網などの情報をもとに、落雷の予測や落雷情報を提供するなど、グループで総合的な雷対策関連事業を展開している。

 当然のことながら、太陽光発電所では、屋外に発電設備を置いている。屋外に置く以上、雷への備えが必要になる。

 日本における雷に対する一般的な印象は、「高い場所に落ちる」というものだ。しかし、同社によると、平地でも落ちることがあるという。

 特に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)は、敷地の面積が広いことから、落雷する可能性は小さくないと見ている。
 
 雷への対策というと、まず思い浮かぶのは、避雷針だろう。先が尖った金属の棒に、雷を呼び込み、地面と接続した導線を通じて、雷による電気エネルギーを地中に放電させる。同社でも、太陽光発電所における落雷対策の一つとして、避雷針の設置を勧めている。

 避雷針は、高さ20m以上の建物では、設置する義務がある。こうした建物が敷地内にない太陽光発電所の場合、避雷針を設置する義務はない。

 このため、日本で敷地内に避雷針を設置している太陽光発電所は少ない(図1)。

図1●太陽光パネルの前に避雷針を設置している例
図1●太陽光パネルの前に避雷針を設置している例
鹿児島・七ツ島の出力約70MWのメガソーラー(出所:日経BP)
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 一方、海外の平原にあるメガソーラーには、避雷針を多く設置している場合がある。落雷が多いことで知られる地域もあり、こうした地域では、日本に比べて、「平地でも落雷が少なくない」との認識が浸透しているのではないかとしている。

 日本の太陽光発電所において、避雷針の導入が進んでいない理由は、発電に寄与しない設備には、できるだけコストをかけたくない事業者が多いことだけでなく、避雷針の影が太陽光パネルにかかり、発電のロスにつながることがある。

 影を避ける方法として、受雷部に避雷針ではなく、「水平導体」を採用する方法もある。

 落雷の際に、保護範囲内の雷を呼び込んで、保護対象物に雷撃を直撃させず、代わりに受け止めて、雷による電気エネルギーを安全に地面に逃す役割は避雷針と同じだが、厚さが最小数mmの金属部材(厚さは材質により異なる)で構成し、落雷から守りたい構造物に取り付けるもので、避雷針のような高さはない。

 避雷針や避雷導体は、あくまでも建物や構造物を、物理的に損傷させないようにするための手法である。発電設備に電気的な影響が及んで損傷することを防ぐには、さらに別の手法が必要になる。