完成前の被災であることから、直接的に経済的な損失を被ったのは、EPCサービス事業者の明電舎となった。

 そのまま使うことにしたパネルだけでなく、地面や基礎、架台などに、被災による影響が後々、現れてくることも考えられるため、三恵観光と明電舎の協議によって、発電開始後もこの被災によって生じたと考えられる不具合が顕在化した場合、明電舎側の負担により補修することとし、設備の復旧を進めた。

 こうした場合、EPCサービス事業者が、施工中の損害保険をどのような内容で契約していたのかが鍵となる。工事用の機器のみを対象とする場合から、施工対象となる太陽光発電設備まで対象とする場合など、さまざまなケースがある。

 また、国や地方自治体などによる公的な補償は実現しなかった。

 敷地内に流れ込んだ泥などの撤去は、三恵観光が負担することになった(図4)。約1000万円を要した。

図4●地面や基礎上に泥が残った
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図4●地面や基礎上に泥が残った
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図4●地面や基礎上に泥が残った
(出所:三恵観光)

 このほか、施工の現地事務所は、浸水した上、流入した水に浮かんだ(図5)。パワーコンディショナー(PCS)や昇圧変圧器(キュービクル)は、納入前で基礎だけが完成した段階で、被災を逃れた。

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上の画像の奥で、浮かんでいる様子が見える。
図5●施工の現地事務所は、浸水しただけでなく、流入した水に浮かんだ
上の画像の奥で、浮かんでいる。右中央では、PCSとキュービクル用のコンクリート基礎の最上部付近まで浸水しているのがわかる。下の画像の赤線付近まで浸水(出所:三恵観光)
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 PCSと昇圧変圧器を支えるコンクリート基礎は、最上部近くまで水に浸かった。今後、同じような水害が起きた場合に備えて、基礎の高さを上げることにした(図6)。

図6●PCSと昇圧変圧器を支えるコンクリート基礎は、被災後にかさ上げ
図6●PCSと昇圧変圧器を支えるコンクリート基礎は、被災後にかさ上げ
稼働後の様子。PCSと昇圧変圧器は納入前で、被災を逃れた(出所:日経BP)
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 発電開始は、被災からの復旧が加わったことにより、2014年12月に先延ばしとなった。

 売電開始後も、明電舎とともに、被災による影響が生じていないかどうか、稼働状況を注視している(図7)。大雨や雷、地震などが起きた後には、電気主任技術者に臨時の巡回を依頼しているという。

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図7●被災からの復旧を経て売電を開始した
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図7●被災からの復旧を経て売電を開始した
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図7●被災からの復旧を経て売電を開始した
稼働後の様子。2017年4月に撮影(出所:日経BP)

 2017年3月には、地面の緩み始めた場所があり、被災による影響と考えられたため、明電舎が補修したという。太陽光パネルの高さがズレしている部分が見つかった際も、被災による影響と考えられたため、これも明電舎が補修した。

 被災を経て、三恵観光では、保険のかけ方を変えた。川南町の発電所だけでなく、当時、すでに稼働していた大阪府、兵庫県の2カ所を含めて変更した。

 例えば、補償の対象に太陽光パネルを加えるようにした。一般的な太陽光発電所向けの損害保険では、昇圧変圧器、PCS、接続箱は対象となっていても、太陽光パネルを対象に含めている保険は少ないという。