太陽光パネルには、製造時や輸送・設置時、また経年劣化によって、さまざまな不具合が生じる場合がある。こうした不具合や、それを検知するための手法について、ケミトックス(東京都大田区)が評価サービスを通じて得た事例や知見を基に、解説記事を連載する(PIDバスバー断線コネクター腐食樹脂の劣化バイパスダイオード故障スネイルトレイル塩害積雪)。

 今回は、強い風による太陽光パネルの損傷の例を紹介する(図1)。

図1●群馬県伊勢崎市における強い風における損傷例
図1●群馬県伊勢崎市における強い風における損傷例
2015年6月に起きた。架台も太陽光パネルも損傷した(出所:日経BP)
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 強い風による太陽光発電システムの損傷として、基礎や架台ごと吹き飛ばされたり、太陽光パネルのカバーガラスが割れたりするといった例が、各地で起きている(群馬県伊勢崎市における例)。

 太陽光パネルに関しては、強風などによる圧力などを想定して、満たしておくべき機械的な強度がIEC(国際電気標準会議)やJIS(日本工業規格)といった規格で定められている。

 ケミトックスによると、強い風に関しては、こうした規格では「対応できていない負荷」があるという。

 例えば、こうした規格が想定している、風速54m/s以上の強風を伴う「猛烈な台風」には満たない風のはずの、風速35m/s程度の台風の通過時に太陽光パネルが破損した例がある。

 また、積乱雲から吹き降ろされた風が、地面にぶつかって吹き戻され、激しい気流を生み出す「ダウンバースト」と呼ばれる風によって、太陽光パネルが破損することもある。

 規格を満たしている製品であるにも関わらず、どうしてこのような破損が起きるのだろうか。

 「強風」には対応できていても、「突風」には対応できていない場合があるのではないかとみている。

 「強風」は風の強い状態で、「突風」は急に吹く強い風を指す。突風は、継続的には吹かず、時間は短い。台風の際には、突風が吹くことがある。

 規格に基づく試験時の圧力と、強風時の風速の関係をみると、「強風」に関して、規格で規定されている2400Paは、風速約64m/sの強風による圧力に相当することになる(図2)。

図2●荷重2400Paによる試験は、風速約64m/sの「強風」に相当
図2●荷重2400Paによる試験は、風速約64m/sの「強風」に相当
風速と試験圧力の関係(出所:ケミトックス)
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