愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」の隣接地に稼働していた出力約1MWメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、行政から法令違反を指摘されたのは昨年2月。建設・運営するフジ建設(愛知県名古屋市)に対し、県は是正工事、市は全面撤去を求めた。同社の提出した是正計画に対し、同年12月1日に県と市が受け入れを表明、設置済みの太陽光パネルのうち、3分の1を撤去し、調整池や緑地帯を新設することになった(関連記事)。今年5月下旬、この計画に沿った是正工事が完了した。

4つの法令に違反

 このメガソーラーは、フジ建設が自社で購入した用地(林地)に建設した。県や市と相談のうえ、各種法規に沿った形で造成し、許可の取得や届け出などの手続きを踏めば、地方自治体が建設を止めさせたり、撤去させたりする権限はない。

 ただ、建設地が「海上の森」に隣接し、各種法規に適応していなかったことから、マスメディアが大きく取り上げ、環境団体や市民の反発を招き、自治体も問題視した。豊かな生態系が維持されている「海上の森」は、愛知万博の会場候補になりながら、市民運動によって計画を変更し、瀬戸市と市民が連携して保護してきた経緯がある(図1)。

図1●「海上の森」の案内図。メガソーラーは「恵みの森」に隣接した北側に位置する
図1●「海上の森」の案内図。メガソーラーは「恵みの森」に隣接した北側に位置する
(出所:日経BP)
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 フジ建設のメガソーラーで、法令違反とされたのは、森林法、砂防法(県砂防指定地区内行為規制条例)、土壌汚染対策法、文化財保護法の4法規で、前者2法は無許可、後者2法は無届けだった。

 加えて市は、「公共用物の管理に関する条例」に基づき、太陽光パネルなど発電設備の撤去を求めた。メガソーラー用地内には、市の所有する公共の道である「里道(赤線)」が約270mにわたって通っており、開発によって寸断されていたからだ(図2)。

図2●北側の山から見た是正前のメガソーラー。里道にもパネルを設置していた
図2●北側の山から見た是正前のメガソーラー。里道にもパネルを設置していた
(出所:日経BP)
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