太陽光パネルには、製造時や輸送・設置時、また経年劣化によって、さまざまな不具合が生じる場合がある。こうした不具合や、それを検知するための手法について、2016年1~6月に、ケミトックス(東京都大田区)が評価サービスを通じて得た事例や知見を基に解説記事を連載した(PIDバスバー断線コネクター腐食樹脂の劣化バイパスダイオード故障スネイルトレイル)。今回から、新たに、2つの事例について紹介する。

 日本では、海岸沿いにも、数多くの太陽光発電所が建設されている。この理由として、土地の造成や土木工事の費用が比較的、割安で済むことのほか、日射を妨げる障害物が少なく、発電量のロスがほとんどないことなどがある。

 ただし、そうした利点の一方で、塩害による損傷の恐れのある場所でもある。そこで、こうしたリスクを想定した設計・施工が重要となっている。

 ちなみに、「塩害」は、沿岸の地域だけで生じるわけではない。塩分に起因する害の総称であり、海水に含む塩分だけでなく、融雪剤に含まれる塩化カルシウムが起因となることもある。

 沿岸地域に立地する太陽光発電所では、太陽光パネルはもちろん、基礎、架台や固定具(クランプ、ボルト)、接続箱、パワーコンディショナー(PCS)など、それぞれを構成する資材や機器ごとに、十分な対策を施した製品や施工法を採用する必要がある。

 例えば、太陽光パネルの場合、通常の製品を、塩害の懸念される環境に長期間、設置しておくと、金属部が腐食したり、樹脂部材が劣化したりする恐れがある(図1)。

図1●太陽光パネルと塩害
図1●太陽光パネルと塩害
塩の堆積がフレームの接続の不具合などを招く恐れがある(出所:ケミトックス)
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 そこで、現在では、多くの太陽光パネルメーカーは、塩害対策を施した仕様の製品を販売している。塩害仕様の製品とはいっても、メーカーや製品によって、重塩害地域に設置した場合は保証しないなど、対応は分かれている。

 中でも、波しぶきが直接、かかるような場所に設置した場合は、保証しないメーカーがほとんどとなっている。

 実際に、沿岸部に設置された太陽光パネルには、どのような塩害が生じる恐れがあるのだろうか。

 例えば、太陽光パネルの外枠となるフレームの接続部には、塩が蓄積しやすい。雨水などでうまく洗い流されれば良いが、そうでない場合、フレームの接続部への塩の蓄積が進んでいく。

 そのうちに、四隅でネジ止めして接続されているフレームのアルミ材同士の接点に塩が入り込むケースが出てくる。その結果、アルミ材同士の電気的な接続に障害を来すことがある。

 長期信頼性の評価の一環として、ケミトックスが塩害対策の度合いを検証した際の塩水噴霧試験などでも、こうした不具合やその兆候が見られた。

 さらに、品質が不十分な太陽光パネルでは、ラミネート内にある配線用のバスバーや、裏面のジャンクションボックス内部のバイパスダイオードが腐食する恐れがある。