太陽光パネルには、製造時や輸送・設置時、また経年劣化によって、さまざまな不具合が生じる場合がある。こうした不具合や、それを検知するための手法について、ケミトックス(東京都大田区)が評価サービスを通じて得た事例や知見について紹介している。

 今回は、「バイパスダイオード」の不具合を紹介する。

 結晶シリコン系のパネルは、すべてのセル(発電素子)を直列で接続している。そのため、不具合によって発電しないセルが1枚でも生じると、太陽光パネル全体に影響を及ぼし、出力が低下してしまう。バイパスダイオードは、こうした太陽光パネルの構造上の弱点を補う機能を担っている。

 何らかの不具合で大幅に出力の低下したセルは電気的には抵抗となる。そうなるとセルの直列回路全体で電流が流れにくくなる。

 こうした出力低下を防ぐために、多くのパネルでは、セルを複数の組(クラスタ)に分けている。万が一、電流の流れにくくなったセルが生じた時には、そのセルを含んだクラスタを迂回することで、残りのクラスタのセルは送電を継続できる。バイパスダイオードがこうした迂回機能を担っている。

 バイパスダイオードが機能するのは、セルに不具合が生じた場合だけではない。

 例えば、太陽光パネルの一部に影がかかった場合、影になっている部分のセルは、同じように出力が大幅に低下する。この時にも、バイパスダイオードが機能し、発電量が大幅に低下したクラスタを迂回する。

 こうした機能を持つバイパスダイオードが故障すると、どうなるのか(図1)。バイパスダイオードの故障には、「オープン」と「ショート」という二つのタイプがある。

バイパスダイオードの故障による不具合
バイパスダイオードの故障による不具合
セルの過熱やジャンクションボックスの変形などにつながる(出所:ケミトックス)
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