日本は世界有数の地震国。家屋の損壊するような大きな揺れも多い。大規模な震災が起きた時、太陽光発電システムはどのような影響を受け、どのように安全が保たれ、どのように損傷したのか――。今回のシリーズでは、住宅用を中心に太陽光発電のオーナーで構成する、特定非営利活動法人(NPO法人)・太陽光発電所ネットワーク(PV-Net:東京都文京区)による調査結果や提言などを紹介する。

 熊本地震による住宅用太陽光発電システムの被災調査では、調査だけではなく、発電システムの被災状況に適した緊急的な対応や、対処法の周知にも取り組んだ。

 今回は、配線を例に紹介する。

 被害の大きかった益城町は、断層の上に位置している地域が多い。2階の屋根上に設置された太陽光パネルは、安全に固定されたままでも、1階が倒壊している住宅が同町を中心に多く見られた(第2回のコラム)。

 こうした場合、1階の壁に設置された接続箱やパワーコンディショナー(PCS)などへの通電状況が、二次災害を防ぐ上で重要になる。

 太陽光パネルは健在なので、日中は発電している。発電した電力が流れてくる状態で、壁の倒壊によって、これらの機器も壁から外れたり、倒壊の影響で配線が損傷する恐れもあるためである。

 PV-Netによると、1階が大きく倒壊している住宅では、配線の状態を確認する作業が困難だったり、調査員の安全を確保することが難しいために、確認を断念した場合もあった。

 PCSへの配線を切断した上、切断部を絶縁することで、比較的安全に直流回路を遮断するなどの処置を講じた例もあった(図1)。接続箱のスイッチを切れない場合に使う、次善の手法として、南阿蘇村の住宅などで講じた。

図1●調査だけでなく、緊急的な処置を施すことも
図1●調査だけでなく、緊急的な処置を施すことも
南阿蘇村における例。PCSへの配線を切断した上で絶縁(出所:PV-Net)
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 この処置は、緊急的なもののため、「処理済」であることを示し、かつ、注意を喚起するための表示も取り付けた。

 表示には、PV-Netの署名を入れた上、「太陽光発電システムの配線を切断しました。絶縁しても微量の電流が流れる可能性があります。触らないでください。専門業者に処置を依頼してください」といった内容を記した。

 こうした場合、望ましいのは、接続箱のスイッチを切ることである。直流回路の遮断方法として、接続箱を適切に活用していない例は、第1回で紹介した東日本大震災による被災調査時でも多かった。

 接続箱のスイッチを切ることで、直流回路を遮断する方法は、施工者にも居住者にも認知度が低いようだ。PV-Netでは、この点に危機感を抱き、住宅の崩壊が多い直下型の大地震を想定し、認知度を上げることが重要と指摘している。

 接続箱を設置する場所も、こうしたことを想定し、適切な位置をある程度、指定する必要があるのではないかとしている。